この調査結果が報道されたのと同じ日に、自民党の有志議員が、家族や地域社会の絆を重視する議員連盟「『絆』を紡ぐ会」(仮称)を設立する、というニュースも報じられた。選択的夫婦別姓などの問題点について議論するそうである。その発起人の一人、元拉致問題担当相の山谷えり子議員は、今年の2月19日に配信された「NHKマガジン」の記事内で、以下の発言をしている。
「選択的と言えども、別姓を認めるとなると、家族のファミリーネームの廃止を意味し、家族のいろんな文化やきずなが壊れていくのではないかと思う。ファミリーが個人個人に分断されていってしまうこととニアリーイコール(ほとんど同じ)になっていくんだと思う。家族観が変わってくる」
「家族のいろんな文化」が何を指すのか不明だが、「きずな」はそんな簡単に壊れるか。夫婦同姓制度を残しているのは日本くらいで、世界の多くの国では別姓制度だったり選択的別姓制度だったりするが、家族の「きずな」は当然のことながら、家族ごとにいろいろだ。強固な家族もあれば、もろい家族もある。それは夫婦同姓制度の今の日本の家族と同じように、である。
また、山谷えり子議員は、こんなことも言っている。
「『ファミリーネームは必要なく、氏は個人に所属する』という考え方を持つ人が時代の流れの中で出てきているのだろうと思うが、通称使用の拡大の工夫をさらにできる余地があるのに、今すぐに『えいや』とやってしまうと、社会の基礎単位の家族が難しい状態になっていくと思う。『通称を使用したい』という人たちが増えていることも事実なので、通称使用の拡大を現実的な解決策としてやっていくことがいいのではないか」
旧姓では口座を作れない銀行も
通称使用は、2001年に公務員でも認められ、いまでは多くの職場が可としているが、旧姓が使える範囲は限定されている。今回の調査を行った市民グループ「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」の公式サイトにでは、以下のように説明している。
〈旧姓が使える範囲は限られています。銀行口座を作れない銀行も多数あります。携帯電話や賃貸借契約では戸籍名でなければ契約できない場合もあります。行政においても、担当者自身が判断できないため、念のため戸籍名でといった対応を取られることもあります。旧姓が使える国は日本以外にないため、海外では旧姓併記がダブルネームと捉えられるため、問題になることがすでに多く起こっています。また、外務省が犯罪利用の可能性があることを認めています。〉
旧姓通称制度に法律的な根拠を持たせるような変更であればよいのでは?という意見に対する回答はこうだ。
〈旧姓通称は海外では一般的ではないため、仕事などをはじめ、多くの場面で混乱を招いています。海外で旧姓を使用したためにパスポートを没収させられたなどの事例が現在も起きていますが、国内において法的な根拠を持たせたからといって、民間企業で仕事上使っている旧姓とパスポートに記載されている戸籍姓と旧姓の2つの姓を見て、問題がないと思ってもらえるとは限りません。(中略)そもそも旧姓通称の制度に法的な根拠をもたせるよりも、選択的夫婦別姓で別姓に法的な根拠を持たせる方が費用面においても運用面においても問題は少なく済みます。〉