2つの新駅開業を告げるヘッドマークを知らせる「ことちゃん」(【ことでん公式】ツイッター @irucakotoより)

2つの新駅開業を告げるヘッドマークを知らせる「ことちゃん」(【ことでん公式】ツイッター @irucakotoより)

 地方都市のバス路線は、どこも赤字が続いている。人口減少と少子高齢化が進み、地方自治体の税収減少は避けられない。そのため、赤字路線を維持することは財政的に難しく、路線バスの廃止・減便・縮小は避けられない。とはいえ、いま移動手段の主役である自動車の運転は、誰もがいつまでも続けられるものではない。自動車を運転しない人が高齢者を中心に増えるのは間違いなく、そのとき必要なのは公共交通機関だ。未来へ持続可能な姿を探して、細かく現在の利用状況などを調査すると、破綻せずに路線バスを存続できる可能性も見えてきた。

 市中心部から郊外へと向かう路線バスは、市中心部の需要が大きい一方で、郊外部の需要は小さい。中心部と郊外を一本で結ぶ路線は、利用者にとって乗り換えなしで目的地まで移動できるので便利な移動手段といえる。その路線発足当時は、おそらく利用者も多く、採算もとれていたのだろう。しかし、様々な状況が変容した現在、経営的な観点で見ると、そうしたバスの運行は非効率的といえる。

 それらのバス路線を短い区間で再編し、需要の多い区間は運行本数を維持する。現在の利用状況に沿ったメリハリのある交通ネットワークの再構築に取り組むことで、公共交通の利便性を損なわないようにする。そうした意図から、鉄道とバスとを結節させる新駅の構想が浮上した。

 このほど誕生する伏石駅は、太田駅と三条駅の中間に開設される。わざわざ新駅を開設しなくても、既存の駅にバスロータリーを開設すれば高松市が目指す交通ネットワークの再構築はできる。

 しかし、太田駅も三条駅も周辺は住宅が密集し、駅前にバスロータリーを造成することは難しかった。こうした事情から、鉄道とバスの結節点を担うことができるバスロータリーの設置が可能な伏石駅が新たにつくられることになった。

「鉄道とバスのネットワーク再構築における施策は、伏石駅だけではありません。明確な開業日時はまだ決まっていませんが、太田駅~仏生山駅間にも新駅の開設を進めています。駅名も未決定ですが、同駅も伏石駅と同様に交通ネットワークの再構築を目指した取り組みの一環です」(同)

 高松市の交通ネットワーク再構築により、ことでんの琴平線には新駅が2つ誕生することになる。新たな駅が誕生すれば利便性は高まるが、一方で同区間の所要時間は増す。新駅に用事のある利用者ばかりとは限らない。使わない人にとっては、デメリットも生じてしまう。そうしたデメリットをカバーすることにも配慮が及んでいる。

「デメリットを軽減するため、三条駅~太田駅間を複線化しました。これにより、駅で対向列車を待つ時間が減ります。また、物理的に運転本数を増やすことが可能になります。太田駅~仏生山駅間に予定されている新駅を開業させる際も、太田駅~仏生山駅間を複線化する予定です」(同)

 鉄道各社は経営を厳しくさせている、それでも、ことでんと高松市は公共交通が持つ使命を重視。持続可能な社会を実現するために、鉄道への投資を続ける。

 高松市とことでんの取り組みは、公共交通とは何か?自治体や鉄道事業者の公的使命とは何か?を考える事例と言っていいだろう。

関連記事

トピックス

水原一平氏のSNS周りでは1人の少女に注目が集まる(時事通信フォト)
水原一平氏とインフルエンサー少女 “副業のアンバサダー”が「ベンチ入り」「大谷翔平のホームランボールをゲット」の謎、SNS投稿は削除済
週刊ポスト
解散を発表した尼神インター(時事通信フォト)
《尼神インター解散の背景》「時間の問題だった」20キロ減ダイエットで“美容”に心酔の誠子、お笑いに熱心な渚との“埋まらなかった溝”
NEWSポストセブン
水原一平氏はカモにされていたとも(写真/共同通信社)
《胴元にとってカモだった水原一平氏》違法賭博問題、大谷翔平への懸念は「偽証」の罪に問われるケース“最高で5年の連邦刑務所行き”
女性セブン
富田靖子
富田靖子、ダンサー夫との離婚を発表 3年も隠していた背景にあったのは「母親役のイメージ」影響への不安か
女性セブン
尊富士
新入幕優勝・尊富士の伊勢ヶ濱部屋に元横綱・白鵬が転籍 照ノ富士との因縁ほか複雑すぎる人間関係トラブルの懸念
週刊ポスト
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン
カンニング竹山、前を向くきっかけとなった木梨憲武の助言「すべてを遊べ、仕事も遊びにするんだ」
カンニング竹山、前を向くきっかけとなった木梨憲武の助言「すべてを遊べ、仕事も遊びにするんだ」
女性セブン
大ヒットしたスラムダンク劇場版。10-FEET(左からKOUICHI、TAKUMA、NAOKI)の「第ゼロ感」も知らない人はいないほど大ヒット
《緊迫の紅白歌合戦》スラダン主題歌『10-FEET』の「中指を立てるパフォーマンス」にNHKが“絶対にするなよ”と念押しの理由
NEWSポストセブン