地方都市のバス路線は、どこも赤字が続いている。人口減少と少子高齢化が進み、地方自治体の税収減少は避けられない。そのため、赤字路線を維持することは財政的に難しく、路線バスの廃止・減便・縮小は避けられない。とはいえ、いま移動手段の主役である自動車の運転は、誰もがいつまでも続けられるものではない。自動車を運転しない人が高齢者を中心に増えるのは間違いなく、そのとき必要なのは公共交通機関だ。未来へ持続可能な姿を探して、細かく現在の利用状況などを調査すると、破綻せずに路線バスを存続できる可能性も見えてきた。
市中心部から郊外へと向かう路線バスは、市中心部の需要が大きい一方で、郊外部の需要は小さい。中心部と郊外を一本で結ぶ路線は、利用者にとって乗り換えなしで目的地まで移動できるので便利な移動手段といえる。その路線発足当時は、おそらく利用者も多く、採算もとれていたのだろう。しかし、様々な状況が変容した現在、経営的な観点で見ると、そうしたバスの運行は非効率的といえる。
それらのバス路線を短い区間で再編し、需要の多い区間は運行本数を維持する。現在の利用状況に沿ったメリハリのある交通ネットワークの再構築に取り組むことで、公共交通の利便性を損なわないようにする。そうした意図から、鉄道とバスとを結節させる新駅の構想が浮上した。
このほど誕生する伏石駅は、太田駅と三条駅の中間に開設される。わざわざ新駅を開設しなくても、既存の駅にバスロータリーを開設すれば高松市が目指す交通ネットワークの再構築はできる。
しかし、太田駅も三条駅も周辺は住宅が密集し、駅前にバスロータリーを造成することは難しかった。こうした事情から、鉄道とバスの結節点を担うことができるバスロータリーの設置が可能な伏石駅が新たにつくられることになった。
「鉄道とバスのネットワーク再構築における施策は、伏石駅だけではありません。明確な開業日時はまだ決まっていませんが、太田駅~仏生山駅間にも新駅の開設を進めています。駅名も未決定ですが、同駅も伏石駅と同様に交通ネットワークの再構築を目指した取り組みの一環です」(同)
高松市の交通ネットワーク再構築により、ことでんの琴平線には新駅が2つ誕生することになる。新たな駅が誕生すれば利便性は高まるが、一方で同区間の所要時間は増す。新駅に用事のある利用者ばかりとは限らない。使わない人にとっては、デメリットも生じてしまう。そうしたデメリットをカバーすることにも配慮が及んでいる。
「デメリットを軽減するため、三条駅~太田駅間を複線化しました。これにより、駅で対向列車を待つ時間が減ります。また、物理的に運転本数を増やすことが可能になります。太田駅~仏生山駅間に予定されている新駅を開業させる際も、太田駅~仏生山駅間を複線化する予定です」(同)
鉄道各社は経営を厳しくさせている、それでも、ことでんと高松市は公共交通が持つ使命を重視。持続可能な社会を実現するために、鉄道への投資を続ける。
高松市とことでんの取り組みは、公共交通とは何か?自治体や鉄道事業者の公的使命とは何か?を考える事例と言っていいだろう。