買われなかった小動物たちの行方は分からない(イメージ)
そういった安価な小動物となると命の「処分」となる。ある関東の大型ショッピングモールに併設したホムセン、そこではハムスターが子どもたちにいじくり倒されていた。毛並みも悪くじっと耐えて隅っこでうずくまっている。カゴの中のインコは狭い鳥小屋に並んでただひたすら目をつむっている。その中の一羽はあちこち禿げている。この子はどうなるのだろう。ミニウサギはドリンクボウルの水が尽きかけている。若いスタッフみなボーッと立っているだけ。親子連れはミニ動物園気分、ショーケース越しに楽しそうだ。ごく当たり前の風景だが、当たり前だろうか。これは異常なのではないか。
「異常ですよ。犬も猫も生後2ヶ月でショーケースに入れられて見世物にされますからね。でもそれをやめようって話はありませんね。幼ければ幼いほど売れるのが現実です」
心配なのはペットショップのコロナ特需
ペットショップ文化は歴史が浅い。1980年代以前は犬猫なんてその辺の雑種を拾うかご近所から貰うもの、一部の趣味人がブリーダーやサロンから純血種を迎え入れる文化だった。それが市場経済の拡大と1989年ごろ始まったとされる仕入れルートのオークション化により生体販売を手掛けることが容易となった。オークションで大量に仕入れて大量に売り、残りは破棄、そんなカオスな業界に国が重い腰を上げたのが先にも言及した動物愛護管理法の改正だが、2019年の改正を経ても軽微な罰則(5年以下の懲役又は500万円以下の罰金)しかないザル法だ。
「罰せられたショップなんてほとんどないと思いますよ」
環境省は今年の10月、動物愛護管理法とは別にショーケースやケージの大きさや飼育できる犬や猫に初めて数値基準を設けることを決めた。本稿のようなペットショップの場合のケージは体長の2倍、横が体長の1.5倍の長さが必要で、従業員1人あたり犬20匹、猫30匹とした。なにもしないよりはいいが、よほど悪質なブリーダーでもなければこの程度の環境、大半のペットショップはさすがに整えているし、いまさらこんなゆるい基準を設けられても意味は薄いだろう。一部の自治体に設置されたアニマルポリスなど民間団体の努力の成果だが、そうした活動におんぶに抱っこ。ボランティアに丸投げなのが現実だ。
「加担した当事者が言えることではないかもしれませんが……せめてショッピングモールやホムセンの販売は見直すべきです。禁止したっていいと思っています。命を扱う専門店ではない場所で無責任に大量販売するのはやめさせるべきです」
池野さんからはこの他にもさまざまな話を聞くことができた。子供の誕生日にリボ払いでチワワを買う親、ペット禁止のワンルームで飼っているのがバレたとトイプードルを返品してきたヤンキーカップル、さみしいからと柴犬を買った独居老人、おそらく犬は老人より生きる。売り上げのためなら犬猫の幸せなんか二の次三の次、いや、ショップで売れ残るくらいならお迎えがあるだけまだ幸せだと思うしかない。バイトの中には病んで辞める女の子もいたという。その子の感覚は極めて正常だと池野さんは語気を強める。
「下痢の止まらないチワワでした。バックヤードのゲージに入れて、そのバイトの子が面倒見ていたんですが本部に送り返す前日に衰弱死してしまいました。チワワはもともと先天性の病気が多いのに、日本では過剰出産と近親交配で生まれつきかわいそうな子が多いんです。あの子(チワワ)の一生ってなんなんでしょうね。私も辞めた口です」