平べったい顔に大きな口が特徴的なブルドッグ(イメージ、Photononstop)

平べったい顔に大きな口が特徴的なブルドッグ(イメージ、Photononstop)

 そういう子は私も数え切れないほど目撃している。多摩の某ホームセンター、狭いショーケースに閉じ込められた柴犬の姿。半年も経てば立派な体格になる。誰も買わなければ永遠に続く収容生活、無間地獄と言っても言い過ぎではないだろう。

「あまりにかわいそうなんで時間を見ては店のバックヤードに離してました。ホムセンのショップだと店内に出す店舗の管理会社がうるさいんです。柴犬なんてそうなるのはわかっているのに本部は仕入れる。その数も多い」

幼ければ幼いほど売れるのが現実

 改正動物愛護管理法以前、私は歌舞伎町のペットショップのショーケースにぎゅうぎゅう詰めのブルドッグを見た。8万円だったか、びっくりするほど安く売られていた。つぶれた鼻にへの字に大きな口が特徴の犬種なのに、かわいそうにマズル(口元)が長いスタンダードには遠い子だった。我が家はこうした短頭種を育ててきたので迎えてあげようかと悩んだが、それはこの店の売り上げに貢献してしまうことになる。

 都心にある別の大手ペット量販店では大型犬として知られるセントバーナードすら出会ったことがある。ブリーダーも店もどうかしている。都心でセントバーナードを買い求める客など、まともに飼える家などどれだけあるだろう。私の故郷、野田でかつてセントバーナードを飼っていた家は羽振りのいい墓石屋の社長だった。犬舎はちょっとした人間の住む平屋クラス、大型室内犬はそれくらいの環境でなければ飼えない。それなのに仕入れて、案の定売れ残った子が狭いショーケースが巨体を丸めている。

「あの業界はみんな狂ってます。ウチは違う、私は違う、記事になると絶対言います。でも嘘ですね。まともなブリーダーやまともな専門店なんて数えるほどです」

 素晴らしい専門店やプロフェッショナル意識の高いブリーダーは存在する。そういったところはおいそれと犬や猫をばらまいたりはしない。ペットビジネスに厳しいヨーロッパ同様、お付き合いから始まるし費用も高い。相手を見て売る売らないを決めることもある。しかし量販ペットショップは売れればいいし儲かればいい。下げに下げて1万円で売ることだってある。相手は虐待マニアかもしれないが、量販ペットショップは在庫さえ捌ければいいしショーケースが空けばいい。高値で売れるかもしれない新しい子のほうがいい。

「動物の命なんて二の次。現実見てみんな辞めます。犬とか猫ばかりの話ですが他にもペットショップに動物はいますよね、小鳥やハムスター、ウサギとかの小動物なんてどうなると思います? それこそ全部スタッフが預かりますとか相手見つけますとか、嘘っぱちです」

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