スポーツ

貴乃花が明かす伝説の優勝決定戦「5倍の痛み止め打った」

一度は引退を考えた「鬼の形相」優勝決定戦の舞台裏とは(撮影/山崎力夫)

一度は引退を考えた「鬼の形相」優勝決定戦の舞台裏とは(撮影/山崎力夫)

 2001年5月27日、大相撲夏場所千秋楽、右膝を亜脱臼しながら強行出場した貴乃花が武蔵丸との横綱決戦を制した。表彰式で小泉純一郎首相(当時)は「痛みに耐えてよく頑張った。感動した! おめでとう!」と賛辞を送った。勝利の瞬間に見せたあまりに険しい顔は「鬼の形相」「鬼の顔」と形容された。伝説的な優勝決定戦の裏側を、貴乃花が振り返る。

 * * *
 2001年の5月場所で7場所連続休場をすることになる大きなケガをしました。全勝で迎えた14日目の武双山戦で右膝を負傷したのですが、これはこの一番だけが原因ではなくこれまでの蓄積があったからでした。

 実は私の右膝には、若い頃から腰を下ろすと関節が外れるような感覚があったのです。その癖は四股を踏むことで出ないようにしていたのですが、あの一番で膝を強打したことで、関節が外れてしまいました。

 土俵からはひとりで降りましたが、支度部屋へは付け人の肩を借りました。風呂場でトレーナーに膝の関節をはめてもらい、ようやく歩けるようになりました。痛いと感じる暇もありませんでしたが、膝はパンパンに腫れているような感じがしましたね。

 しかし、続く千秋楽の武蔵丸戦を休場する選択はありませんでした。現役晩年という自覚があったし、あのまま休場していたら引退もありましたから。ケガに負けることはできない。這ってでも土俵に上がるしかないという気持ちでした。

「綺麗な引き際」だったかもしれないが……

 翌朝、病院で右膝にたまった血を抜き、痛み止めを打ちました。痛み止めは国技館に向かう直前にもう1回。通常の5倍の量は打ちましたね。

 蹲踞(そんきょ)をした時に右膝の関節が外れやすいので注意しながら土俵入りも無事こなしましたが、本割であっさりと負けてしまった。それで気が入ってしまったのでしょう。決定戦でいつも通り蹲踞をしたものだからカクッと外れてしまいました。塩を取りに行くときに右足が土俵につかないで浮いている。棄権も頭を過りましたが、膝をぐるぐる回しているうちにポコンとはまってくれました。それでなんとか私の取り口が取れたと思います。

関連キーワード

関連記事

トピックス

まだ重要な問題が残されている(中居正広氏/時事通信フォト)
中居正広氏と被害女性Aさんの“事案後のメール”に「フジ幹部B氏」が繰り返し登場する動かぬ証拠 「業務の延長線上」だったのか、残された最後の問題
週刊ポスト
生徒のスマホ使用を注意しても……(写真提供/イメージマート)
《教員の性犯罪事件続発》過去に教員による盗撮事件あった高校で「教員への態度が明らかに変わった」 スマホ使用の注意に生徒から「先生、盗撮しないで」
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《ロマンス詐欺だけじゃない》減らない“セレブ詐欺”、ターゲットは独り身の年配男性 セレブ女性と会って“いい思い”をして5万円もらえるが…性的欲求を利用した驚くべき手口 
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《ブログが主な収入源…》女優・遠野なぎこ、レギュラー番組“全滅”で悩んでいた「金銭苦」、1週間前に公表した「診断結果」「薬の処方」
NEWSポストセブン
京都祇園で横行するYouTuberによる“ビジネス”とは(左/YouTubeより、右/時事通信フォト)
《芸舞妓を自宅前までつきまとって動画を回して…》京都祇園で横行するYouTuberによる“ビジネス”「防犯ブザーを携帯する人も」複数の被害報告
NEWSポストセブン
由莉は愛子さまの自然体の笑顔を引き出していた(2021年11月、東京・千代田区/宮内庁提供)
愛子さま、愛犬「由莉」との別れ 7才から連れ添った“妹のような存在は登校困難時の良きサポート役、セラピー犬として小児病棟でも活動
女性セブン
インフルエンサーのアニー・ナイト(Instagramより)
海外の20代女性インフルエンサー「6時間で583人の男性と関係を持つ」企画で8600万円ゲット…ついに夢のマイホームを購入
NEWSポストセブン
ホストクラブや風俗店、飲食店のネオン看板がひしめく新宿歌舞伎町(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」のもとにやって来た相談者は「女風」のセラピスト》3か月でホストを諦めた男性に声を掛けた「紫色の靴を履いた男」
NEWSポストセブン
『帰れマンデー presents 全国大衆食堂グランプリ 豪華2時間SP』が月曜ではなく日曜に放送される(番組公式HPより)
番組表に異変?『帰れマンデー』『どうなの会』『バス旅』…曜日をまたいで“越境放送”が相次ぐ背景 
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《自宅から遺体見つかる》遠野なぎこ、近隣住民が明かす「部屋からなんとも言えない臭いが…」ヘルパーの訪問がきっかけで発見
NEWSポストセブン
2014年に結婚した2人(左・時事通信フォト)
《仲間由紀恵「妊活中の不倫報道」乗り越えた8年》双子の母となった妻の手料理に夫・田中哲司は“幸せ太り”、「子どもたちがうるさくてすみません」の家族旅行
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(左/Xより)
《大学時代は自由奔放》学歴詐称疑惑の田久保市長、地元住民が語る素顔「裏表がなくて、ひょうきんな方」「お母さんは『自由気ままな放蕩娘』と…」
NEWSポストセブン