ビジネス

介護崩壊に怯える現場 コロナで職員の離職に歯止めかからず

需要増でも事業存続危機にある介護業界(イメージ)

需要増でも事業存続危機にある介護業界(イメージ)

 介護保険法が施行されて以来の20年で、2020年は「老人福祉・介護事業」倒産が過去最多を記録したと東京商工リサーチが報じた。もともと介護については、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になる年に限界がやってくる「2025年問題」で介護崩壊が怖れられてきたが、新型コロナウイルスによって、5年早い2020年に崩壊しそうなほどバランスが崩れてしまった。ライターの森鷹久氏が、悲鳴をあげる介護現場の声をレポートする。

 * * *
「とにかく人がいない、すでにこれまで請けていた仕事を断っているような状況。時給を上げるなどして対応していますが、はっきり言って『崩壊している』と言ってよい状況です」

 千葉県内でデイサービス事業を営む伊藤良典さん(仮名)の会社では、介護スタッフ不足が深刻化し、コロナ前より事業規模を縮小させた。もともと慢性的に人が足りない状態ではあったが、今は事業停止すら考えるほどだという。需要が右肩上がりであるにも関わらず、だ。

「感染したら嫌だ、ということでスタッフの3分の1にあたる人たちが辞めてしまったことが一番のきっかけですね。濃厚接触はするな、密を作るなと言われていますが、介護職はそんなこと言っていられない。中には、高齢の利用者にウイルスをうつしたくないということで辞めていかれたスタッフさんもいます」(伊藤さん)

 こうした現状は、当然利用者側にも混乱を招いている。

「夫が職場内でコロナに感染も症状はほぼなし。ホテルで10日間程度療養しただけなのですが、デイサービスを利用していた義父が、施設側から利用を拒否されました」

 東京都内在住のパート・本田まり子さん(仮名・40代)は、夫が職場でコロナに感染したことを理由に、同居する義父(80代)のデイサービス利用を断られた。普段の義父は、平日は朝から夕方までデイサービスを利用。コロナ禍になって以降は家庭内で家族との接触を極力減らすなどしており、夫との「濃厚接触」もなかったが、施設側は「万が一のことがある」として、義父の利用を認めなかったという。

関連キーワード

関連記事

トピックス

民放ドラマ初主演の俳優・磯村勇斗
《ムッチ先輩から1年》磯村勇斗が32歳の今「民放ドラマ初主演」の理由 “特撮ヒーロー出身のイケメン俳優”から脱却も
NEWSポストセブン
亡くなった米ポルノ女優カイリー・ペイジさん(インスタグラムより)
《米ネトフリ出演女優に薬物死報道》部屋にはフェンタニル、麻薬の器具、複数男性との行為写真…相次ぐ悲報に批判高まる〈地球上で最悪の物質〉〈毎日200人超の米国人が命を落とす〉
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
松竹芸能所属時のよゐこ宣材写真(事務所HPより)
《「よゐこ」の現在》濱口優は独立後『ノンストップ!』レギュラー終了でYouTubeにシフト…事務所残留の有野晋哉は地上波で新番組スタート
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
早朝のJR埼京線で事件は起きた(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」に切実訴え》早朝のJR埼京線で「痴漢なんてやっていません」一貫して否認する依頼者…警察官が冷たく言い放った一言
NEWSポストセブン
降谷健志の不倫離婚から1年半
《降谷健志の不倫離婚から1年半の現在》MEGUMIが「古谷姓」を名乗り続ける理由、「役者の仕事が無く悩んでいた時期に…」グラドルからブルーリボン女優への転身
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、さまざまな障壁を乗り越えてきた女性たちについて綴る
《佐々木希が渡部建の騒動への思いをストレートに吐露》安達祐実、梅宮アンナ、加藤綾菜…いろいろあっても流されず、自分で選択してきた女性たちの強さ
女性セブン