「役者には、大きく分けて二つのタイプがあるかと思います。演じ手自身が個性的で『役を自分に近づける』方(スタータイプ)と、『自分を役に近づける』方(職人タイプ)。大泉洋さんは前者寄りで、彼が演じてこそ意味があるキャラクターを、生き生きと画面に映してきました。

 そもそも、大泉洋さんご自身のトーク力が抜群で、トボけた感じを出しつつ、鋭いツッコミを繰り出す業(わざ)に長けているため、その特技を生かさない手はありません」

 SYO氏によれば大泉は“スタータイプ”で、役柄を自らの個性に引きつけてしまう力があるようだ。実際、『新解釈・三國志』の予告映像では、共演者にツッコミを入れたりボヤキを連発したりと、大泉ならではのトーク力が演技として発揮されているのを見て取ることができる。そしてこうしたキャラクターが確立されているからこそ、シリアスな役柄も面白い演技として成立してしまうのである。

「『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』は、大泉さんの特技を生かした好例といえます。先日制作発表されたNetflix映画『浅草キッド』では、柳楽優弥さん演じる北野武さんの師匠を演じるとのことでした。彼の話術&笑いのセンスが、いかんなく発揮されることでしょう。

 反対に、『探偵はBARにいる』シリーズでは、彼がハードボイルドに決めることで生まれるギャップが、面白さを醸し出しています。また、『恋は雨上がりのように』や『アイアムアヒーロー』では“カッコ悪さ”をこれまた生き生きと表現。これらも、パブリックイメージを逆手に取った好アプローチ、と言えるかもしれません。

『新解釈・三國志』は、福田雄一さんが監督・脚本とのことで、より大泉さん個人の魅力を存分に引き出す傾向が強くなると予想されます。メタ的なツッコミやボヤキなど、コント的な世界観が展開することでしょう」(SYO氏)

 三国志を題材にした映画は2008年公開の『レッドクリフ』をはじめこれまでもたびたび製作されてきたものの、斬新なコメディタッチで描いた邦画が公開されるのは初めてではないだろうか。少なくとも、俳優・大泉洋の脱力感あふれる魅力が存分に堪能できる映画となることは間違いなさそうだ。

◆取材・文/細田成嗣(HEW)

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