国際情報

崖っぷちのトランプ「自分を恩赦」vs「逮捕」のせめぎ合い

大統領令の乱発はトランプ氏の得意技(AFP=時事)

大統領令の乱発はトランプ氏の得意技(AFP=時事)

 トランプ氏は、来年1月にバイデン大統領が誕生するまではアメリカ大統領である。その地位にあるからこそ使える大権を行使する権利がある。例えば、すべての米軍に指令することもできるし、核ミサイルのボタンを押すこともできる。退任前にイラン空爆をする可能性もゼロではない。もうひとつ、現在注目されているのが恩赦の権利である。アメリカ大統領は、過去の犯罪はもちろん、訴訟中、捜査中など「未来の犯罪」に対しても広範に恩赦を与えて無罪放免することができる。その特権を使って「自分自身を恩赦する」のではないかと見られているのである。ニューヨーク在住ジャーナリスト・佐藤則男氏は、ある高名な弁護士に、大統領の「自己恩赦」について直撃した。

 * * *
 ドナルド・トランプ大統領はすでに、共和党系ロビイストで盟友のロジャー・ストーン氏や、側近のマイケル・フリン氏に対して恩赦を与えている。個人弁護士のルディ・ジュリアーニ元ニューヨーク市長が恩赦について相談したとも言われる。そして、自分と家族に対して退任前に恩赦を与えるという観測が広がっている。大統領が自分を恩赦できるかについては諸説あるが、明確な規定がなくはっきりしない。ただし、捜査前に先制的に、広範に恩赦を与えることはできるから、簡単に言うと、「今後何が出てきても、俺と家族を生涯、訴追しない」という決定を今のうちにしておくというわけである。

 今回話を聞いたH氏は、ハーバードロースクールを優秀な成績で卒業し、現在はロサンゼルスで多くの企業やセレブリティを顧客に活躍している弁護士だ。筆者とは大学院卒業直後からの長い付き合いで、ビジネスでは難しい仕事で何度も助けられた。頭脳明晰で行動力も決断力もずば抜けている。

 まず筆者は、すでに報じられている恩赦をめぐる贈収賄疑惑について聞いた。トランプ氏から恩赦を受ける目的で、不正な工作があった可能性について、司法省が今年8月から捜査を行っていることが明らかになっている。

「このタイミングで大統領の犯罪追及が表沙汰になった意味は大きい。トランプ氏が大統領の地位に居座ろうとすることを揺さぶる意味がある。政権移行を拒むトランプ氏に対する効果的な牽制なのだろう。ただし、司法省が求めている関係者の通信記録やメールの開示が裁判所に認められたとしても、証拠固めはそう簡単ではない。はっきり犯罪の証拠になるような記録は誰も残さないものだ」(H氏)

 トランプ氏にかけられた犯罪の疑惑は山のようにある。例えば就任直後に発覚した「トランプ大学」での授業料詐欺はメディアを賑わしたが、うやむやに終わっている。必ず儲けられるようになると言葉巧みに多額の授業料を取りながら、それに見合う講義やサポートは一切行わず、生徒には口止めの誓約までさせていた事件である。

関連記事

トピックス

昭和館を訪問された天皇皇后両陛下と長女・愛子さま(2025年12月21日、撮影/JMPA)
天皇ご一家が戦後80年写真展へ 哀悼のお気持ちが伝わるグレーのリンクコーデ 愛子さまのジャケット着回しに「参考になる」の声も
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん(時事通信フォト)
《ジャンボ尾崎さん死去》伝説の“習志野ホワイトハウス豪邸”にランボルギーニ、名刀18振り、“ゴルフ界のスター”が貫いた規格外の美学
NEWSポストセブン
西東京の「親子4人死亡事件」に新展開が──(時事通信フォト)
《西東京市・親子4人心中》「奥さんは茶髪っぽい方で、美人なお母さん」「12月から配達が止まっていた」母親名義マンションのクローゼットから別の遺体……ナゾ深まる“だんらん家族”を襲った悲劇
NEWSポストセブン
シーズンオフを家族で過ごしている大谷翔平(左・時事通信フォト)
《お揃いのグラサンコーデ》大谷翔平と真美子さんがハワイで“ペアルックファミリーデート”、目撃者がSNS投稿「コーヒーを買ってたら…」
NEWSポストセブン
愛子さまのドレスアップ姿が話題に(共同通信社)
《天皇家のクリスマスコーデ》愛子さまがバレエ鑑賞で“圧巻のドレスアップ姿”披露、赤色のリンクコーデに表れた「ご家族のあたたかな絆」
NEWSポストセブン
1年時に8区の区間新記録を叩き出した大塚正美選手は、翌年は“花の2区”を走ると予想されていたが……(写真は1983年第59回大会で2区を走った大塚選手)
箱根駅伝で古豪・日体大を支えた名ランナー「大塚正美伝説」〈3〉元祖“山の大魔神”の記録に挑む5区への出走は「自ら志願した」
週刊ポスト
12月中旬にSNSで拡散された、秋篠宮さまのお姿を捉えた動画が波紋を広げている(時事通信フォト)
〈タバコに似ているとの声〉宮内庁が加湿器と回答したのに…秋篠宮さま“車内モクモク”騒動に相次ぐ指摘 ご一家で「体調不良」続いて“厳重な対策”か
硫黄島守備隊指揮官の栗林忠道・陸軍大将(写真/AFLO)
《戦後80年特別企画》軍事・歴史のプロ16人が評価した旧日本軍「最高の軍人」ランキング 1位に選出されたのは硫黄島守備隊指揮官の栗林忠道・陸軍大将
週刊ポスト
米倉涼子の“バタバタ”が年を越しそうだ
《米倉涼子の自宅マンションにメディア集結の“真相”》恋人ダンサーの教室には「取材お断り」の張り紙が…捜査関係者は「年が明けてもバタバタ」との見立て
NEWSポストセブン
死体遺棄・損壊の容疑がかかっている小原麗容疑者(店舗ホームページより。現在は削除済み)
「人形かと思ったら赤ちゃんだった」地雷系メイクの“嬢” 小原麗容疑者が乳児遺体を切断し冷凍庫へ…6か月以上も犯行がバレなかったわけ 《錦糸町・乳児遺棄事件》
NEWSポストセブン
11月27日、映画『ペリリュー 楽園のゲルニカ』を鑑賞した愛子さま(時事通信フォト)
愛子さま「公務で使った年季が入ったバッグ」は雅子さまの“おさがり”か これまでも母娘でアクセサリーや小物を共有
NEWSポストセブン
ネックレスを着けた大谷がハワイの不動産関係者の投稿に(共同通信)
《ハワイでネックレスを合わせて》大谷翔平の“垢抜け”は「真美子さんとの出会い」以降に…オフシーズンに目撃された「さりげないオシャレ」
NEWSポストセブン