国内

高齢者Go To自粛の支離滅裂 若者の移動で帰省感染爆発も

大阪は、重症患者向けの臨時施設を開設予定だ(時事通信フォト)

大阪は、重症患者向けの臨時施設を開設予定だ(時事通信フォト)

「特に若いと“まあ大丈夫だろう”という感覚が高齢者よりも強い。若い人が“私は大丈夫だ”と考えてしまう。それが危険」

『サンデーモーニング』(12月6日放送、TBS系)でそう語ったのは、77才の関口宏。政府と東京都が「65才以上の高齢者」などに、「Go To トラベル」の利用自粛を求めたことについてのコメントだった。宮根誠司(57才)は『情報ライブ ミヤネ屋』(2日放送、日本テレビ系)で、「若い人たちは(まだ人生が長く)時間があるので、2~3か月がまんしてください」と、若者の移動自粛を求めた。

 東京都や大阪府などでは「不要不急の外出の自粛」を強く求めている。一方で巨額の税金が投じられて「旅行に行け」という国家的なキャンペーンが展開されている。それがいかに支離滅裂で矛盾していることかは、子供にでもわかることだ。

 ただでもめちゃくちゃな話な上に、にわかに浮上したのが、「高齢者はダメ」「若者はOK」というさらに複雑な事態だった。それは、世代間の対立や、さらなる感染拡大を招き、死者を倍増させることが懸念される──。

 第3波の襲来で重症者や死者が増えるなか、医療体制が逼迫した北海道と大阪に自衛隊が派遣されることが決まった。血液内科医の中村幸嗣さんは行政の対応に怒りを隠さない。

「第1波の段階で医療従事者や病床の不足はわかっていたのに、この10か月、なぜ何も手を打ってこなかったのか。東京も当初は協力体制を築いていた自衛隊と現在はなんの協議も進んでおらず、この先が不安です」

 非常事態が迫るなか、菅義偉首相が示したのは、看板政策の“見直し”だった。12月2日、国と東京都は「Go To トラベル」の東京発着の旅行について、65才以上の高齢者と基礎疾患のある人に自粛することを正式に求めた。自粛期限は12月17日だが、現状では感染拡大にブレーキがかかる気配がまったくなく、期限の延長は避けられない。年末年始の連休へも影響は必至だ。

 冒頭の関口の発言のように、65才以上は自粛という年齢制限を設けると、「危ないのは重症化しやすい高齢者だけ」という誤解を与え、逆に安心した若者が大挙して旅行に繰り出す可能性がある。

 しかし、そもそも感染を拡大させているのは若者だということを忘れてはならない。東京の感染者数のうち60代以上が占める割合は2割弱にすぎず、30代までが5割を超える(12月6日時点)。無症状の陽性者の増加も大きな懸念材料だ。

 若者の移動が実際に感染を広げている状況も明らかになりつつある。厚労省の新型コロナ感染症対策アドバイザリーボードが2020年1~8月に移動歴のある約2万5000人の感染者を調べたところ、県をまたいだ移動歴のある感染者のなかで「家族以外に感染させた人」は10~50代で89%に達し、そのうち20代が33%を占めた。その結果を受け、当然のことだが、アドバイザリーボードの脇田隆字座長は「20代から50代の比較的活発な人の移動を抑えることが重要」と発言。だが、それは黙殺されている。

関連キーワード

関連記事

トピックス

訃報が報じられた日テレの菅谷大介アナウンサー
「同僚の体調を気にしてシフトを組んでいた…」日テレ・菅谷大介アナが急死、直近で会話した局関係者が語る仲間への優しい”気遣い”
NEWSポストセブン
愛子さま(撮影/JMPA)
愛子さま、母校の学園祭に“秋の休日スタイル”で参加 出店でカリカリチーズ棒を購入、ラップバトルもご観覧 リラックスされたご様子でリフレッシュタイムを満喫 
女性セブン
悠仁さま(撮影/JMPA)
悠仁さま、筑波大学の学園祭を満喫 ご学友と会場を回り、写真撮影の依頼にも快く応対 深い時間までファミレスでおしゃべりに興じ、自転車で颯爽と帰宅 
女性セブン
クマによる被害が相次いでいる(getty images/「クマダス」より)
「胃の内容物の多くは人肉だった」「(遺体に)餌として喰われた痕跡が確認」十和利山熊襲撃事件、人間の味を覚えた“複数”のツキノワグマが起こした惨劇《本州最悪の被害》
NEWSポストセブン
近年ゲッソリと痩せていた様子がパパラッチされていたジャスティン・ビーバー(Guerin Charles/ABACA/共同通信イメージズ)
《その服どこで買ったの?》衝撃チェンジ姿のジャスティン・ビーバー(31)が“眼球バキバキTシャツ”披露でファン困惑 裁判決着の前後で「ヒゲを剃る」発言も
NEWSポストセブン
2025年10月末、秋田県内のJR線路で寝ていた子グマ。この後、轢かれてペシャンコになってしまった(住民撮影)
《線路で子グマがスヤスヤ…数時間後にペシャンコに》県民が語る熊対策で自衛隊派遣の秋田の“実情”「『命がけでとったクリ』を売る女性も」
NEWSポストセブン
(時事通信フォト)
文化勲章受章者を招く茶会が皇居宮殿で開催 天皇皇后両陛下は王貞治氏と野球の話題で交流、愛子さまと佳子さまは野沢雅子氏に興味津々 
女性セブン
名古屋事件
【名古屋主婦殺害】長らく“未解決”として扱われてきた事件の大きな転機となった「丸刈り刑事」の登場 針を通すような緻密な捜査でたどり着いた「ソフトテニス部の名簿」 
女性セブン
雅子さま(2025年10月28日、撮影/JMPA
【天皇陛下とトランプ大統領の会見の裏で…】一部の記者が大統領専用車『ビースト』と自撮り、アメリカ側激怒であわや外交問題 宮内庁と外務省の連携ミスを指摘する声も 
女性セブン
今年の6月に不倫が報じられた錦織圭(AFP時事)
《世界ランキング急落》プロテニス・錦織圭、“下部大会”からの再出発する背景に不倫騒と選手生命の危機
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さんの胸キュンワンシーンが話題に(共同通信社)
《真美子さんがウインク》大谷翔平が参加した優勝パレード、舞台裏でカメラマンが目撃していた「仲良し夫婦」のキュンキュンやりとり
NEWSポストセブン
兵庫県宝塚市で親族4人がボーガンで殺傷された事件の発生時、現場周辺は騒然とした(共同通信)
「子どもの頃は1人だった…」「嫌いなのは母」クロスボウ家族殺害の野津英滉被告(28)が心理検査で見せた“家族への執着”、被害者の弟に漏らした「悪かった」の言葉
NEWSポストセブン