「観光業界のドン」二階幹事長は首相の「心変わり」に怒り心頭か(共同通信イメージズ)
「支持率42%というのは安倍政権末期に近い数字。ハネムーン期間といわれる総理就任100日間も終わっていないのに、NHK調査でここまで下がるとは予想していなかった。このニュースで総理の周辺がにわかに慌ただしくなって、夕方の感染症対策本部の会議で重大発表するという話が官邸内に伝わって緊張した」(官邸スタッフ)
Go To停止を発表すると、菅首相はこの日2回目の記者会見を開き、こう語った。
「今日、(新規感染者が)3000人を超えるなかにあって、年末年始というのは、集中的に対策を講じられる時期だというふうに思いました。そうした中で、Go Toトラベルを全国一旦は停止すべきであるという決断をいたしました。年末年始には、医療機関の体制も、どうしても縮小せざるを得ない、そんな状況になります。是非、国民の皆様におかれましては、年末年始、静かにお過ごしいただいて、このコロナ感染というものを何としても食い止める。そうしたことに御協力いただきたい、そういう思いのなかで自ら判断しました」
そんな行き当たりばったりの対応だから、当然ほころびが出る。首相の“心変わり”に、今度は自民党の最高実力者で首相の後見人である二階俊博・幹事長の周辺が騒ぎ出す。
「総理は何考えているんだ」
二階派幹部は菅首相への怒りを隠さない。少し背景の説明が必要だろう。二階氏は全国約5500社の旅行代理店を束ねる社団法人「全国旅行業協会」会長を長年務め、「観光業界のドン」と呼ばれる。2015年には国会議員や旅行業者など3000人の大訪問団を率いて訪中、2018年には観光関連団体幹部を率いてロシアを訪問するなど、インバウンドによる観光振興の旗を振ってきた。
その二階氏と菅氏は、もともとGo Toで“盟約”を結んでいた。菅氏は安倍内閣の官房長官時代、コロナ対策の主導権を握るために二階氏と手を組み、経済再生策の切り札としたのがGo Toキャンペーンだ。当初は安倍氏が信頼を置いていた経産省がコロナ対策のとりまとめ役だったが、「持続化給付金」をめぐる丸投げ問題で批判されると、Go Toトラベルは二階氏の影響力が強い国土交通省、観光庁の所管とし、そこから菅氏と二階氏のタッグはキャンペーンを強力に推進してきた。安倍内閣の閣議決定では、Go Toなどの経済対策は「感染症の拡大が収束し、国民の不安が払拭された後」に実施する方針だったのに、感染第2波のさなかにあった7月にキャンペーンは見切り発車された。