国内

菅&二階「ステーキ忘年会」はGo To停止の「手打ち」なのか

ステーキ会談に対する国民の批判を「誤解」と言ってのけた菅首相(時事通信フォト)

ステーキ会談に対する国民の批判を「誤解」と言ってのけた菅首相(時事通信フォト)

 菅義偉・首相は「勝負の3週間」で大敗を喫した。新型コロナの感染拡大が止まらず、感染者数が過去最多を更新し続けているのにGo Toキャンペーンを続け、支持率が急落すると慌てて一時停止を打ち出し、今度は自民党内で反発を招いている。「勝負」などと格好つけてみたものの、何もしなかったことのツケが回った。しかし、このツケを払うのは国民だ。ジャーナリスト・武冨薫氏が国民の命と生活を犠牲にする政権の内幕をリポートする。

 * * *
「勝負の3週間」が始まった11月25日、菅首相は国会でこう語ってGo Toキャンペーンの見直しを否定していた。

「政府の役割は国民の命と暮らしを守ることだが、暮らしを守らないと命も守れなくなる。地方のホテル、旅館、バス、タクシー、食材提供業者、土産店など全国に900万人おり、Go Toトラベルで何とか雇用を維持してきている」(衆院予算委員会集中審議)

 その後も首相は、感染症対策の国際的権威である尾身茂氏(新型コロナウイルス感染症対策分科会会長)が再三Go Toの再考を求め、中川俊男・日本医師会会長が医療崩壊の危機を訴えても、「トラベルが感染拡大の原因であるとのエビデンスは存在しない」と頑なにGo Toを中止しようとしなかった。そればかりか、コロナ対策の補正予算でGo Toトラベルの期間延長に1兆円を計上して逆にキャンペーンを拡大する方針さえ打ち出した。そんな金があるなら医療体制の充実や医療従事者への手当に回すべきだというのが大半の国民の気持ちだろう。

 ところが、「勝負の3週間」が終わる2日前の12月14日、菅首相はいきなり方針を大転換する。夕方の新型コロナウイルス感染症対策本部の会議で「年末年始の全国一斉Go To停止」を表明したのである。

 推進派が仰天したのも無理はない。この日の午後まで、菅首相はGo To停止のそぶりは全く見せていなかったのである。首相は官邸で宮坂昌之・大阪大免疫学フロンティア研究センター招聘教授と昼食をともにした。免疫学の第一人者で、「日本人はこれまで風邪のコロナに何度もかかり、交差免疫により新型コロナの感染や重症化を抑えている」という説を唱えていることで知られる。Go Toキャンペーンについても、〈過度な自粛は経済的な閉塞につながるなど弊害が少なくありません。旅行という行動自体では、コロナの感染は増えません。旅先で羽目を外すから感染を広げてしまうのです。「Go To」の実施で感染が再拡大するのは想定されていたこと。それでも感染症対策を十分行った上で、経済対策もやっていかざるを得ない〉(『週刊朝日』、12月11日号のインタビュー)と語っている人物だ。

 さらに会食後、首相はコロナ治療の最前線となっている新宿区の国立国際医療研究センターを視察。視察後の会見で分科会の尾身会長が大阪、札幌でのGo To一部停止に「ステージ3」相当の東京、名古屋を加えるように求めていることについて聞かれると、

「まだ決まっていません。ただ、分科会からは、ステージ3に相当するところには、そうしたことも必要だと提言を受けております」

 と語っただけだ。その数時間後に方針を大転換した動機は、その日発表されたNHKの世論調査で内閣支持率が42%に急落、前月から一気に14ポイントも落ち込んだことだったという。Go Toトラベルについても「いったん停止すべき」という意見が79%に達していた。官邸はこれに衝撃を受けた。

関連キーワード

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン