「人類はいま、スマホに試されている」と語る鴻上尚史さん
志駕:それはめちゃくちゃいい話ですね(笑い)。パパ活アプリで犯罪に巻き込まれてしまう女子大生もいれば、“逆代理婚活”をする女子大生もいる。使い方や環境次第で、武器にも刃物にもなり得る存在だと改めて感じています。
鴻上:要は、人類がまだスマホやネットという新しいメディアに慣れていない。ぼくはSNSや連載が何度も炎上した炎上中級者ですが(笑い)、それでもツイッターを見ていると、思いがけず面白い表現や言葉を見つけて「おっ」と感銘することがある。そうした瞬間があると離れられません。いわばぼくたちはいま、「スマホに試されている」のではないかと思います。
志駕:本当にその通りですね。「試されている」というのは何もスマホに限ったことじゃないですよね。一度収束したように思えたコロナも、いままた蔓延しています。どう対峙すべきかということも、一人ひとりが再び考えるときなのかもしれない。
鴻上:過去、アメリカで大きな台風が来たときに人種に関係なく手を取り合って助け合った事例があるように、すごく悲惨な状況になったとき、本来ならば人間は助け合えるはずだけど、一方で楽な方に流されていってしまうこともある。試練のときなのかもしれません。
志駕:そういう時代だからこそ、やっぱりエンタメの力が大事だと思う。いま、笑いや感動が少ないからギスギスしている面もあるんじゃないでしょうか。だから、いろいろなものに試されながらも、面白いストーリーを作っていきたいと心から思います。
【プロフィール】
志駕晃(しが・あきら)/1963年生まれ。明治大学商学部卒業後、ニッポン放送入社。制作部、編成部等を経て、その傍ら小説を書き始め、2017年に『スマホを落としただけなのに』が第15回『このミステリーがすごい!』大賞〈隠し玉〉に選ばれ、デビュー。同作はシリーズ第2作『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』共々映画化され話題に。著書はほかに『ちょっと一杯のはずだったのに』『オレオレの巣窟』『私が結婚をしない本当の理由』等。
鴻上尚史(こうかみ・しょうじ)/1958年生まれ。1981年に劇団「第三舞台」を結成。1987年『朝日のような夕日をつれて’87』で紀伊國屋演劇賞団体賞、1995年『スナフキンの手紙』で岸田國士戯曲賞、2009年戯曲集『グローブ・ジャングル』で読売文学賞受賞。主な著書に、『同調圧力』『「空気」を読んでも従わない』『「空気」と「世間」』『鴻上尚史のほがらか人生相談』『ドン・キホーテ 笑う!』ほか多数。舞台公演のかたわら、ラジオ・パーソナリティー、テレビ番組の司会、映画監督など幅広く活動。
◆撮影/為末直樹
※女性セブン2021年1月7・14日号