ライフ

壇蜜 世代を超えて輝く「いわさきちひろのイメージ」に感動

「ちひろのアトリエ」:1972年頃のアトリエの様子を復元(特別に許可を得て展示内部で撮影)

「ちひろのアトリエ」:1972年頃のアトリエの様子を復元(特別に許可を得て展示内部で撮影)

 美術史家で明治学院大学教授の山下裕二氏とタレントの壇蜜の“日本美術応援団”が、日本の美術館や博物館の常設展を巡るこのシリーズ。東京都練馬区の「ちひろ美術館」を訪れた2人は、収蔵品、いわさきちひろの生活を感じられる私物なども鑑賞し、語り合った。

山下:いわさきちひろは画家としての人生をほぼこの地で過ごし、自宅の跡地に建つちひろ美術館・東京にはアトリエも復元されています。書棚には宮沢賢治やアンデルセンなど、思い入れの強い作品がぎっしりと並んでいますね。ちひろは日本でも有数のアンデルセンの描き手でもあるんです。本の横のマトリョーシカ人形はソ連へ旅をした折のお土産かな。

壇蜜:机にある小物が入ったバター飴の缶ひとつとっても、好きなものや趣味に根付いた生き方をされていたことが伝わります。アトリエの脇に飾ってある同系色のツーピースと帽子も素敵。華美ではないけれどもちひろさんならではの美意識があって、ファッションにも水彩画に通じるエッセンスが感じられますね。

山下:そのセンスは作品にも反映されていて、『枯れ葉と赤い服の少女』(1971年)にはこのツーピースとそっくりな装いの少女が登場しますよ。1970年代の初頭はちひろの仕事が最も充実していた時期で、中学生の僕もよく知っていました。

壇蜜:亡くなられて45年以上ですが、その後に生まれた私たちの世代の間でもちひろさんのイメージはずっと生き続けています。

山下:いつでもちひろの絵に会える場をというファンの声で作られたのが、この美術館。生前のアトリエ風景など彼女が過ごした時間や愛した空間が、作品と共に訪れる人々の心へ今も語りかけてくるのでしょう。

【プロフィール】
山下裕二(やました・ゆうじ)/1958年生まれ。明治学院大学教授。美術史家。『日本美術全集』(全20巻、小学館刊)監修を務める、日本美術応援団団長。

壇蜜(だん・みつ)/1980年生まれ。タレント。執筆、芝居、バラエティほか幅広く活躍。近著に『三十路女は分が悪い』(中央公論新社刊、12月9日発売)。

●ちひろ美術館・東京
【開館時間】10時~17時(最終入館16時30分)※当面の間16時閉館、最終入館15時30分に短縮
【休館日】月曜(祝日の場合は翌日/GWと8月10~20日は無休)、年末年始(1月2日から開館)、冬期休館・臨時休館あり
【入館料】一般1000円
【住所】東京都練馬区下石神井4-7-2

撮影/太田真三 取材・文/渡部美也

※週刊ポスト2021年1月1日・8日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

9月に成年式を控える悠仁さま(2025年4月、茨城県つくば市。撮影/JMPA)
悠仁さまが学園祭にご参加、裏方として“不思議な飲み物”を販売 女性グループからの撮影リクエストにピースサイン、宮内庁関係者は“会いに行ける皇族化”を懸念 
女性セブン
V9伝説を振り返った長嶋茂雄さんのロングインタビューを再録
【長嶋茂雄さんロングインタビュー特別再録】永久不滅のV9伝説「あの頃は試合をしていても負ける気がしなかった。やっていた本人が言うんだから間違いないよ」
週刊ポスト
山尾志桜里氏(=左。時事通信フォト)と望月衣塑子記者
山尾志桜里氏“公認取り消し問題”に望月衣塑子記者が国民民主党・玉木代表を猛批判「自分で出馬を誘っておいて、国民受けが良くないと即切り捨てる」
週刊ポスト
“超ミニ丈”のテニスウェア姿を披露した園田選手(本人インスタグラムより)
《けしからん恵体で注目》プロテニス選手・園田彩乃「ほしい物リスト」に並ぶ生々しい高単価商品の数々…初のファンミ価格は強気のお値段
NEWSポストセブン
オンラインカジノを利用していたことが判明した山本賢太アナウンサー(ホームページより)
フジテレビ・山本賢太アナのオンラインカジノ問題で懸念される“局内汚染”「中居氏の問題もあるなかで弱り目に祟り目のダメージになる」
週刊ポスト
「〈ゆりかご〉出身の全員が、幸せを感じて生きられるのが理想です。」
「自分は捨てられたと思うのは簡単。でも…」赤ちゃんポスト第1号・宮津航一さん(21)が「ゆりかごは《子どもの捨て場所》じゃない」と思う“理由”
NEWSポストセブン
都内の人気カフェで目撃された田中将大&里田まい夫妻(時事通信フォト/HPより))
《ファーム暮らしの夫と妻・里田まい》巨人・田中将大が人気カフェデートで見せた束の間の微笑…日米通算200勝を目前に「1軍から声が掛からない事情」
NEWSポストセブン
浅草・浅草寺で撮影された台湾人観光客の写真が物議を醸している(Xより)
「私に群がる日本のファンたち…」浅草・台湾人観光客の“#羞恥任務”が物議、ITジャーナリスト解説「炎上も計算の内かもしれません」
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(時事通信フォト)
《スヤスヤ寝顔動画で話題の佳子さま》「メイクは引き算くらいがちょうどよいのでは…」ブラジル訪問の“まるでファッションショー”な日替わり衣装、専門家がワンポイントアドバイス【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
2013年大阪桐蔭の春夏甲子園出場に主力として貢献した福森大翔(本人提供)
【10万人に6例未満のがんと闘う甲子園のスター】絶望を支える妻の献身「私が治すから大丈夫」オリックス・森友哉、元阪神・西岡や岩田も応援
NEWSポストセブン
ブラジル公式訪問中の佳子さま(時事通信フォト)
《佳子さまの寝顔がSNSで拡散》「本当に美しくて、まるで人形みたい」の声も 識者が解説する佳子さま“現地フィーバー”のワケ
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 食卓を汚染する「危ない輸入冷凍食品」の闇ほか
「週刊ポスト」本日発売! 食卓を汚染する「危ない輸入冷凍食品」の闇ほか
NEWSポストセブン