社会の両極を繋ぐパパ活は〈分断化が進む社会の中で生まれた一種のあだ花〉で、〈結局世の中はお金持ちと美人で回っている〉? また2004年に日本育英会が日本学生支援機構になって以降、奨学金が〈有利子の学生ローン〉と化し、〈若者の貧困というよりは、親の経済力の低下が問題なんです〉等々、耳の痛い台詞や表現があちこちに配され、それが事実だけに胸を抉る。
「ただ、鎌倉署の〈佐渡谷〉署長が〈最近の女子大生は一体どうなっているんだ〉とオヤジ丸出しに嘆くのも、僕は大事だと思うんですよ。咲希たちがパパ活に走った背景を確かに我々はもっと知るべきだとは思う。でもその前にパパ活なんて絶対ダメだと、フツウに怒れる大人がいる限り、まだまだ日本も捨てたもんじゃないと、僕は信じたいんです」
そもそも「時代抜きには書けないし、書きたくないエンタメ作家」を自称する著者は、コロナで困窮した学生がパパ活に走ることを本気で心配し、やがて友映が辿り着く真犯人像にすら時代の影や悲しみを宿すのだ。
【プロフィール】
志駕晃(しが・あきら)/1963年生まれ。明治大学商学部卒業後、ニッポン放送入社。制作部、編成部勤務の傍ら小説を書き始める。2017年に『スマホを落としただけなのに』が第15回『このミステリーがすごい!』大賞〈隠し玉〉に選ばれ、デビュー。同作はシリーズ第2作『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』共々映画化され話題に。著書は他に『ちょっと一杯のはずだったのに』『オレオレの巣窟』『私が結婚をしない本当の理由』等。171cm、68kg、O型。
構成/橋本紀子 撮影/国府田利光
※週刊ポスト2021年1月1・8日号