映画イベントでロマンスカーアテンダントの制服姿を披露した大島優子(時事通信フォト)
VSEは景色が見やすいように外側へと傾いた座席や幅広い窓など、箱根路を楽しむための工夫がふんだんに凝らされている。飲食という点に絞っても、VSEは車内にカウンターブースを設置するなど、ホスピタリティ面に力が入っていた。
VSEはロマンスカーの復権を掲げた車両だけあって、「小田急といえばロマンスカー」「ロマンスカーといえば”走る喫茶室”」を改めて強く認識させた。
VSEにつづいて登場した60000形MSEにも、同様のカウンターブースが設置された。2015年に公開された映画『ロマンス』では、元AKBの大島優子さんがMSEのアテンダント役を演じた。車内販売の舞台となったのがVSEではなくMSEだったのは、最新型車両をPRするという目的があったのだろう。いずれにしても、そうして点からは小田急がシートサービスやワゴン販売を本格的に復活させていくことを予感させた。
しかし、VSEやMSEで復活したシートサービスは、コンビニの普及などに伴い退潮していく。2016年のダイヤ改正で、再び小田急はシートサービスを終了。以降、全面的にワゴン販売へと切り替えられていった。
コロナ禍により、2020年には一部のロマンスカーでワゴン販売も中止していた。そして、とうとう2021年3月のダイヤ改正でワゴン販売も全面的に廃止されることが決まった。
シートサービス・ワゴン販売が終了したことに伴い、VSEやMSEに設置されたカウンターブースは不要になってしまう。
「現役で走るVSEやMSEの車内には、コーヒーマシンやビールサーバーが設置されていたカウンターブースが残ったままになっています。今後、これらの設備をどうするのか? といったことまでは、まだ決まっていません」(同)