ビジネス

ロマンスカーのワゴンサービス全廃 「鉄道の飲食」は転換期

新宿駅を出発する小田急ロマンスカー50000形VSE

新宿駅を出発する小田急ロマンスカー50000形VSE

 各地のデパートなどで時折、開催する「駅弁大会」は大人気だ。だが、実際に車窓を眺めながら駅弁を食べたのは、いつだったろうかと最近の体験を思い出せなくなっている人が少なくないのではないか。ライターの小川裕夫氏が、小田急ロマンスカー車内販売の取りやめをきっかけに、鉄道と飲食サービスについてレポートする。

 * * *
 2020年における最大のトピックスは、なんといっても新型コロナウイルスの感染拡大だろう。4月7日に発令された緊急事態宣言は5月に全国で解除されたが、その後に第2波が襲来。現在は第3波の真っ只中にあり、コロナ禍は収束する気配を見せない。

 飲食店では閑古鳥が鳴き、観光地からは客足が遠のく。どこの業界も苦境に追い込まれた一年だったが、コロナ禍は鉄道業界にも容赦なかった。それは2020年に限った話ではなく、2021年にも影響が出始めている。

「コロナの影響もあり、2021年3月のダイヤ改正を機にロマンスカーの車内販売は取りやめになります。以降は、車内に設置された自動販売機の利用を呼びかける予定です」と話すのは、小田急電鉄CSR・広報部の報道担当者だ。

 小田急は、東京・新宿と小田原や江の島などを結ぶ鉄道路線。看板特急のロマンスカーは、箱根路への足として絶大な人気を誇る。小田急ロマンスカーはゆったりした座席のために寛いで移動ができるほか、広い窓ガラスのため雄大な景色を堪能できることも評判を高めた。

 それ以上にロマンスカーのウリだったのは、淹れたてコーヒーやほかほかの弁当・サンドイッチなどを座席まで運んできてくれるシートサービスだった。

 ロマンスカーでシートサービスが開始された当時はまだ、コンビニやファミレスが日本に存在していなかった。当時の鉄道旅をする人にとって飲食の心配が今より大きい。そのため、全国に線路を敷いていた国鉄は乗車時間も長くなるので食堂車を連結して利用者に食事を提供した。しかし、私鉄の乗車時間は長くても2時間ほどしかない。食堂車を連結しても不経済になる。私鉄に食堂車は不要だった。

 それでも、小田急は乗客サービスの向上といった目的から、ロマンスカーの車内で軽食などを提供するシートサービスを1949年にスタート。小田急のシートサービスは“走る喫茶室”と呼ばれて好評を博した。

 長らく小田急の代名詞にもなっていた”走る喫茶室”は、いったん1995年に終了する。これに落胆したファンは少なくなかったが、2005年に新型ロマンスカー50000形VSEが登場するとシートサービスも復活した。

関連キーワード

関連記事

トピックス

全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
相撲協会の公式カレンダー
《大相撲「番付崩壊時代のカレンダー」はつらいよ》2025年は1月に引退の照ノ富士が4月まで連続登場の“困った事態”に 来年は大の里・豊昇龍の2横綱体制で安泰か 表紙や売り場の置き位置にも変化が
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト