芸能

コロナ禍でも配信しない落語家・三遊亭萬橘の「やっぱり生が一番」

三遊亭萬橘がナマの魅力を再認識させてくれた

三遊亭萬橘がナマの魅力を再認識させてくれた(イラスト/三遊亭兼好)

 音楽誌『BURRN!』編集長の広瀬和生氏は、1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接してきた。広瀬氏の週刊ポスト連載「落語の目利き」より、配信しない三遊亭萬橘によってナマの魅力を再認識した体験についてお届けする。

 * * *
 コロナ禍に襲われた2020年、配信で落語を観るのが当たり前になったことで、結果的に「一年間で観た落語の数」は例年と大差なかった。

 ただ「配信しない演者」を観る機会は減った。たとえば三遊亭萬橘。2月の独演会以降に観た萬橘の落語は9月と10月に1席ずつと寂しい限り。だが11月の末になって久々に萬橘を集中的に聴くことができた。

 まず11月25日の「三遊亭兼好・三遊亭萬橘二人会“俺たちの円楽党”」(なかのZERO小ホール)。二人とも新作と古典を一席ずつの昼夜興行で、僕は昼の部へ。萬橘がマイク・タイソンの一代記を地噺形式で熱く語った後、兼好が『茶の湯』を演じて仲入り。兼好の新作は太神楽曲芸の芸人が包丁を用いた大技を決める『スカイツリー』で、兼好が披露した“エア太神楽”の見事さは特筆モノ。舞台上に毬や傘、咥えバチ、茶碗、包丁などが見えるようで、リアルに太神楽を観ているような拍手が客席から巻き起こる。

 兼好が“ヒザの色物”としてトリへ繋ぐと、萬橘が演じたのは『浜野矩随』。ネタの交換で萬橘からこれを教わった一之輔では今年4回も聴いたが、萬橘は去年の7月以来。「父の真似から脱却する矩随」を独自の型で演じる萬橘の『浜野』は逸品だと、改めて感銘を受けた。

 その3日後には日本橋社会教育会館で独演会「萬橘スペシャル」を観たが、これがもう圧巻! マクラも含めて爆笑に次ぐ爆笑だった。

 一席目の『蔵前駕籠』は、通常の「客が自ら裸になって駕籠に乗る」演り方ではなく、駕籠屋から客に「あらかじめ裸になって乗る」ことを指示するという設定。出てくる追いはぎは武士を装った町人で、駕籠を襲う前の彼らのトボケた会話を描いて笑わせるのも萬橘だけの演出だ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

12月9日に亡くなった小倉智昭さん
【仕事こそ人生でも最後は妻と…】小倉智昭さん、40年以上連れ添った夫婦の“心地よい距離感” 約1年前から別居も“夫婦のしあわせな日々”が再スタートしていた
女性セブン
去就が注目される甲斐拓也(時事通信フォト)
FA宣言した甲斐拓也に辛口評価 レジェンド・江本孟紀氏が首を傾げた「なんでキャッチャーはみんな同じフォームなのか」
NEWSポストセブン
10月1日、ススキノ事件の第4回公判が行われた
「激しいプレイを想像するかもしれませんが…」田村瑠奈被告(30)の母親が語る“父娘でのSMプレイ”の全貌【ススキノ首切断事件】
NEWSポストセブン
NBAレイカーズの試合観戦に訪れた大谷翔平と真美子さん(AFP=時事)
《真美子夫人との誕生日デートが話題》大谷翔平が夫婦まるごと高い好感度を維持できるワケ「腕時計は8万円SEIKO」「誕生日プレゼントは実用性重視」  
NEWSポストセブン
元夫の親友と授かり再婚をした古閑美保(時事通信フォト)
女子ゴルフ・古閑美保が“元夫の親友”と授かり再婚 過去の路上ハグで“略奪愛”疑惑浮上するもきっぱり否定、けじめをつけた上で交際に発展
女性セブン
六代目山口組の司忍組長。今年刊行された「山口組新報」では82歳の誕生日を祝う記事が掲載されていた
《山口組の「事始め式」》定番のカラオケで歌う曲は…平成最大の“ラブソング”を熱唱、昭和歌謡ばかりじゃないヤクザの「気になるセットリスト」
NEWSポストセブン
12月9日に亡くなった小倉智昭さん
小倉智昭さん、新たながんが見つかる度に口にしていた“初期対応”への後悔 「どうして膀胱を全部取るという選択をしなかったのか…」
女性セブン
激痩せが心配されている高橋真麻(ブログより)
《元フジアナ・高橋真麻》「骨と皮だけ…」相次ぐ“激やせ報道”に所属事務所社長が回答「スーパー元気です」
NEWSポストセブン
無罪判決に涙を流した須藤早貴被告
《紀州のドン・ファン元妻に涙の無罪判決》「真摯に裁判を受けている感じがした」“米津玄師似”の男性裁判員が語った須藤早貴被告の印象 過去公判では被告を「質問攻め」
NEWSポストセブン
12月6日に急逝した中山美穂さん
《追悼》中山美穂さん、芸能界きっての酒豪だった 妹・中山忍と通っていた焼肉店店主は「健康に気を使われていて、野菜もまんべんなく召し上がっていた」
女性セブン
トンボをはじめとした生物分野への興味関心が強いそうだ(2023年9月、東京・港区。撮影/JMPA)
《倍率3倍を勝ち抜いた》悠仁さま「合格」の背景に“筑波チーム” 推薦書類を作成した校長も筑波大出身、筑附高に大学教員が続々
NEWSポストセブン
自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
【入浴中の不慮の事故、沈黙守るワイルド恋人】中山美穂さん、最後の交際相手は「9歳年下」「大好きな音楽活動でわかりあえる」一緒に立つはずだったビルボード
NEWSポストセブン