無観客で行われた全日本柔道選手権。2020年12月(時事通信フォト)

無観客で行われた全日本柔道選手権。2020年12月(時事通信フォト)

 もちろん、親同士の間にも、不穏な空気が生まれていた。ただし、大人としてそれは口にしてはいけないという暗黙の了解もある。しかし、子供達にはそんな不文律など理解できるはずがない。親の意向で練習や試合に参加しなくなった子供達を、参加する子供達が非難し始めたというのである。当然、不参加になった子供達は、自分がそう決めたわけではないにも関わらず非難をされることには納得ができない。嫌みを言うだけだったのが掴み合いに発展するなど、チームは空中分解寸前だという。

「感染再拡大で、首都圏に緊急事態宣言が発令され、大会はやはり中止。でも、子供達は直前まで練習を続けていたんです。一方で、中止になったからと言って、はい残念でしたとみんなの仲が戻るわけでもない。すでにチームを辞めてしまった子供もいます。こんなことで、才能を発揮出来ない、生かせない子供達がいるのかと思うと不憫で仕方がない」(依田さん)

 コロナの影響で、スポーツの才能を生かせないことが、一生を左右するかもしれないという事例も起きている。

 神奈川県在住の主婦・財津美由紀さん(仮名・40代)は、陸上部で活躍する中学生3年生の娘が、自身の将来に悲観しているのだと訴える。

「小学校時代から足が早く、地元の陸上クラブからも誘われ、このままいけば陸上の特待生として高校にも進学できると、指導してくれる先生達から太鼓判をもらっていました。娘もその気になり、文武両道でゆくのだと勉強以外の時間はほとんど陸上の練習に費やすほど没頭。以前は何事にもやる気を見せなかった娘がと、私も主人と抱き合って喜んでいたんです」(財津さん)

 ところが、一昨年の秋、練習中に怪我を負ってしまい、参加予定だった大会への出場が叶わなくなってしまった。それでも本番は3年の夏。それまでに良い成績を出し、強豪校へのアピールをすれば良い。実力的にも時間的にも、十分に間に合う。そう思っていたところにコロナ禍がやってきた。春の大会も、中学3年生にとっては最後の夏の大会も全て中止に。一度つまずいてしまった財津さんの娘が、再び自身の才能を発揮する機会がゼロになってしまったのである。

「娘は泣きじゃくり、もう陸上はやれない、やりたくもないと半ば投げ出してしまったんです。それでも先生方が気をかけてくれて、セレクションや、学校の部活外での大会に呼んで頂いたりしまして……。一応、何校かから声をかけて頂きました」(財津さん)

 とはいえ、本当に目指していた「特待生」として娘を迎え入れてくれる学校はなく「推薦」という形になったが、娘はやはり納得がいかない様子だという。

関連キーワード

関連記事

トピックス

2011年に放送が開始された『ヒルナンデス!!』(HPより/時事通信フォト)
《日テレ広報が回答》ナンチャン続投『ヒルナンデス!』打ち切り報道を完全否定「終了の予定ない」、終了説を一蹴した日テレの“ウラ事情”
NEWSポストセブン
青森県東方沖地震を受けての中国の反応は…(時事通信フォト)
《完全な失敗に終わるに違いない》最大震度6強・青森県東方沖地震、発生後の「在日中国大使館」公式Xでのポスト内容が波紋拡げる、注目される台湾総統の“対照的な対応”
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)の高場悟さんに対する”執着”が事件につながった(左:共同通信)
《名古屋主婦殺害》「あの時は振ってごめんねって会話ができるかなと…」安福久美子容疑者が美奈子さんを“土曜の昼”に襲撃したワケ…夫・悟さんが語っていた「離婚と養育費の話」
NEWSポストセブン
卓球混合団体W杯決勝・中国-日本/張本智和(ABACA PRESS/時事通信フォト)
《日中関係悪化がスポーツにも波及》中国の会場で大ブーイングを受けた卓球の張本智和選手 中国人選手に一矢報いた“鬼気迫るプレー”はなぜ実現できたのか?臨床心理士がメンタルを分析
NEWSポストセブン
数年前から表舞台に姿を現わさないことが増えた習近平・国家主席(写真/AFLO)
執拗に日本への攻撃を繰り返す中国、裏にあるのは習近平・国家主席の“焦り”か 健康不安説が指摘されるなか囁かれる「台湾有事」前倒し説
週刊ポスト
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
週刊ポスト
優勝パレードでは終始寄り添っていた真美子夫人と大谷翔平選手(キルステン・ワトソンさんのInstagramより)
《大谷翔平がWBC出場表明》真美子さん、佐々木朗希の妻にアドバイスか「東京ラウンドのタイミングで顔出ししてみたら?」 日本での“奥様会デビュー”計画
女性セブン
パーキンソン病であることを公表した美川憲一
《美川憲一が車イスから自ら降り立ち…》12月の復帰ステージは完売、「洞不全症候群」「パーキンソン病」で活動休止中も復帰コンサートに懸ける“特別な想い”【ファンは復帰を待望】 
NEWSポストセブン
「交際関係とコーチ契約を解消する」と発表した都玲華(Getty Images)
女子ゴルフ・都玲華、30歳差コーチとの“禁断愛”に両親は複雑な思いか “さくらパパ”横峯良郎氏は「痛いほどわかる」「娘がこんなことになったらと考えると…」
週刊ポスト
話題を呼んだ「金ピカ辰己」(時事通信フォト)
《オファーが来ない…楽天・辰己涼介の厳しいFA戦線》他球団が二の足を踏む「球場外の立ち振る舞い」「海外志向」 YouTuber妻は献身サポート
NEWSポストセブン
海外セレブも愛用するアスレジャースタイル(ケンダル・ジェンナーのInstagramより)
「誰もが持っているものだから恥ずかしいとか思いません」日本の学生にも普及する“カタチが丸わかり”なアスレジャー オフィスでは? マナー講師が注意喚起「職種やTPOに合わせて」
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「旧統一教会から返金され30歳から毎月13万円を受け取り」「SNSの『お金配ります』投稿に応募…」山上徹也被告の“経済状況のリアル”【安倍元首相・銃撃事件公判】
NEWSポストセブン