パターン2(不眠症やうつ病等の精神疾患)では薬の“効きすぎリスク”が生じるという。
「眠りが浅くなる傾向がある場合、睡眠薬も処方されることが多い。その後、うつ状態が悪化すると抗うつ薬や抗精神薬を追加されることもあります。これらの薬は似たような作用であるため、薬の効き目が強くなりすぎることがあります。瞳孔が開く、尿が出ない、便秘、胃荒れ、肥満などの症状が出やすくなる」(長澤氏)
歳を重ねるにつれて骨粗鬆症や、背中や関節の痛みに悩まされる人が増える(パターン3)。北品川藤クリニック院長の石原藤樹医師が指摘する。
「骨粗鬆症治療薬と鎮痛薬は、どちらも胃を荒らして胃腸障害を引き起こす副作用があります。それを防ぐために胃酸分泌抑制薬を併用しますが、その影響でカルシウムの吸収が阻害され、かえって骨粗鬆症を進行させてしまうことがある。そして今度は骨粗鬆症治療薬の量を増やす“負の連鎖”に陥ってしまいます」
薬の種類で“相性”が変わる
このように「副作用を抑えるための薬」が多剤処方の引き金となる。
都内在住の60代男性は、腰の痛みで通院するうちに非ステロイド性抗炎症薬や疼痛治療剤などの薬を続々と追加され、現在は5種類の薬を併用している。
「薬の種類が増える典型的なパターンです。腰痛症など痛みが生じる病気では、非ステロイド性抗炎症薬で痛みが治まらなければ疼痛治療剤が追加されるケースが多く、同時に胃荒れやふらつきなどの副作用を抑える薬も処方されます。こうして雪だるま式に薬の種類が増えていく」(同前)