「元在日特権を許さない市民の会会長」として2016年東京都知事選挙に出馬した桜井誠氏(時事通信フォト)
当時の灰塚さんは、大手物流企業の派遣事務員。特に可もなく不可もない平凡な生活を送っていたが、ネット上の情報に触れてから人生が変わった、と話した。その後、間も無く、主にネットを通じて外国人排斥の訴えが多くの人々に伝搬しだすと、灰塚さんの人生はまた変化を迎えた。
「あのときは、SNSで知り合ったことがきっかけで出入りしていた保守団体の中で、いろんなトラブルが起きていたんです。男女関係に金銭問題。正義の人達だと思っていたのに、団体に関与する人たちが様々な嘘をついている、これが許せませんでした」
思考が一転した、と灰塚さんは言うが、それは自らの考え方が間違っていたと改めた、という意味ではなく、その時いた場所に嫌気がさし、全く別の方向に視線をやったところ、美しく見えた、そして新しい地平が開けたような気分になれた、ということだったらしい。そして、この事をきっかけに、それまでとは真逆の主張を展開するグループ、いわゆる「反差別団体」のメンバーにSNSで接触した。この行動はかなり奇妙に見えるが、灰塚さんにとっては自然なことで、矛盾をなくすためのものだった。
身内に嫌気がさし敵だと感じ始めると「敵の敵は味方」と考える、その内容ではなく敵の攻撃をしてくれる人は自分の友、と受け止める性質を灰塚さんは持っているようだった。その結果、外国人排斥団体のデモ隊に熱視線を送っていた一年後に、思想的には正反対の、外国人排斥団体の活動を辞めさせる働きかけをする団体こそ、自分が属すべき側だと考えるようになった。そして、その団体メンバーと近しい仲になる、という転身を遂げていた。
「その団体で仲良くしていた友人から、飲み会に連れて行ってもらったりして、ここでも色々学びました。日本と韓国、北朝鮮の分断を図っているのはアメリカ。第二次世界大戦で負けて以来、日本はずっとアメリカの言いなり。実は保守系の文化人にも同じことを言っている人がいて、スッと自分の中で理解できたんです」
しかしまたしても、男女関係と金銭にまつわるトラブルが発生した。団体は「外国人排斥運動」に反対するという一点のみでは共闘していたものの、それぞれのグループの利害関係を巡り対立。内部では詐欺トラブルや刑事事件も起きており、反社会的勢力に属する人間の関与も暗黙の了解とされていた。