在日外国人排外デモに抗議する人たち。写真は2013年3月(時事通信フォト)

在日外国人排外デモに抗議する人たち。写真は2013年3月(時事通信フォト)

 どのグループにつくのかと迫られたという灰塚さんは、今度はSNSを通じて知り合った男性の政治運動家に相談し、別の革新系政治団体に出入りするようになる。

「まず、今までやってきた右翼運動や左翼運動を全否定されました。でも、否定されるだけではなく、今こうして私がここにいる選択をしたことが正しいのだと褒めてもくれました。勉強して、理想を追い求めて動いて、裏切られて失意の中でしたから、やっと来るべきところに来たんだと思いました」

 そうして、政治運動家の手伝いをしながら全国を転々とする生活を一年ほど送った。政治運動家とは体の関係も持つようになり、付き合っていると思っていたが、男性には灰塚さんと同じような「女性」が複数いるようで、運動の途中にかち合うこともあった。当然トラブルになるのかと思われたが……。

「食事や飲み会に、普通に色んな女性を連れてきて、最初は嫌でしたけど……。女性のうち一人は、男性と夜な夜な大麻などの薬物をやっていて、その行為をできることが男性の本妻と言いますか、一つも二つも位(くらい)が違うという位置付けでした。私や他の女性も、男性と薬物を分かち合えるようになりたい、もっと近づきたいと思うようになっていました」

 側から見れば、性行為を前提とした「カルト組織」にも見えるが、ここでも幹部同士の対立や金銭の問題が勃発し、再びグループから身を引くことになった灰塚さん。薬物を利用していた女性のうち数人が、男性との関係のもつれをきっかけに警察やマスコミなどへ「通報」し、組織自体が空中分解したこともあり、逃げるようにして、病気の父一人が住む関東にある実家の市営団地に身を寄せた。これが三年ほど前の出来事だ。

理想に近づいている実感はある

 灰塚さんは、実家へ身を寄せてしばらくはSNSなどを断ち、父親の看病に専念し、喫茶店でのパートなどをして過ごしていた。しかし、父親に認知症の症状が出始めたことから、もう面倒は見きれないと思い、一人で家を出た。

「面倒を見なきゃと思いますが、私の人生、それで終わっちゃうような気がして。役所に電話して、週に三、四回はヘルパーさんがきてくれるようになったからいいかなと。あと、父が私の生き方に対して否定的だというのもありましたから、もう縁を切ってしまおうと」

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