ライフ

高齢者の心が活気付く「聞き書き」のススメ 思い出を巡り泣き笑い

小田さんが全国を巡る好演で使っている紙芝居。

小田さんが全国を巡る講演で使っている手作りの紙芝居。表紙の動物は小田さんのシンボルマーク

 人生の先輩の話を聞いて記録し、地域の文化や歴史を後世に残す「聞き書き」。長い人生を歩んできた高齢者にとっては、いろいろな出来事を思い出し話すことで元気になる。その効用が医療や福祉の現場でも注目され、聞き手のボランティア養成も盛んだ。

 聞き書きの第一人者、小田豊二さんが聞くと、みんな実に楽しそうにイキイキと話し出すという。“話を聞く”とはごく簡単なことのようだが、普段の老親との会話はどうだろう。どんどん話したくなって元気が湧く聞き方、そして魅力的な聞き書き本のまとめ方を伝授いただいた。

相手が話したいことを探って丁寧に聞く

 普段“話を聞く”というときは、自分が知りたいことを質問するのではないだろうか。答えが返ってきて、それで会話が途切れてしまうこともある。聞き書きの場合、まずそこから違うのだ。

「聞き書きはこちらが知りたいことではなく、話し手が話したいことを聞くのです。人は物語を生きている”というのは、日本聞き書き学校の校長でノンフィクション作家の柳田邦男さんの名言。みんな、自分が主人公の物語の途中を生きている。お年寄りは、すでにものすごく壮大な物語を持っているわけです。そしてもう1人の自分が思い出していくのを書き留めるのが聞き書きです」

 長い物語、たくさんの出来事の中でその人が話したいことを探るにも少々コツがある。小田さんはそれを“目に見えない薬箱”と呼んでいる。

「薬箱の中身は言葉。たとえば両親、祖父母、兄弟姉妹。子供の頃の遊びや学校、運動会、遠足、正月、祭、戦争、流行歌、人気俳優など、話の大きなテーマです。楽しい気持ちで記憶を呼び起こし、次々話したくなるような良薬もあれば、嫌な思い出の劇薬もある。その人によく効く薬を探す感覚で話を振ってみましょう。

 話が始まると、つい自分本位の質問や意見を挟みたくなるかもしれませんが、あくまで傾聴。話し手と同じ立場になって、一緒に話の流れに乗っていくことが大切です」

関連キーワード

関連記事

トピックス

《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
大阪桐蔭野球部・西谷浩一監督(時事通信フォト)
【甲子園歴代最多勝】西谷浩一監督率いる大阪桐蔭野球部「退部者」が極度に少ないワケ
NEWSポストセブン
がんの種類やステージなど詳細は明かされていない(時事通信フォト)
キャサリン妃、がん公表までに時間を要した背景に「3人の子供を悲しませたくない」という葛藤 ダイアナ妃早逝の過去も影響か
女性セブン
創作キャラのアユミを演じたのは、吉柳咲良(右。画像は公式インスタグラムより)
『ブギウギ』最後まで考察合戦 キーマンの“アユミ”のモデルは「美空ひばり」か「江利チエミ」か、複数の人物像がミックスされた理由
女性セブン
30年来の親友・ヒロミが語る木梨憲武「ノリちゃんはスターっていう自覚がない。そこは昔もいまも変わらない」
30年来の親友・ヒロミが語る木梨憲武「ノリちゃんはスターっていう自覚がない。そこは昔もいまも変わらない」
女性セブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
大谷翔平の通訳・水原一平氏以外にもメジャーリーグ周りでは過去に賭博関連の騒動も
M・ジョーダン、P・ローズ、琴光喜、バド桃田…アスリートはなぜ賭博にハマるのか 元巨人・笠原将生氏が語る「勝負事でしか得られない快楽を求めた」」
女性セブン
”令和の百恵ちゃん”とも呼ばれている河合優実
『不適切にもほどがある!』河合優実は「偏差値68」「父は医師」のエリート 喫煙シーンが自然すぎた理由
NEWSポストセブン
大谷翔平に責任論も噴出(写真/USA TODAY Sports/Aflo)
《会見後も止まらぬ米国内の“大谷責任論”》開幕当日に“急襲”したFBIの狙い、次々と記録を塗り替えるアジア人へのやっかみも
女性セブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン