スポーツ

日本を背負い母国に敗れた 南ア出身ラグビー日本代表の「愛と誇り」

南アフリカとの対戦にはどんな思いが?(写真=AP/AFLO)

母国南アフリカとの対戦にはどんな思いが?(写真=AP/AFLO)

 2019年のラグビーW杯の準々決勝で、日本代表は強敵・南アフリカ代表に敗れた。ベスト4を狙う大事なこの試合を、それとは別の意味で特別な思いで迎えていたのが、南アフリカ出身の日本代表選手だ。日本を背負って母国と戦った2人の選手の思いとは──。『国境を越えたスクラム』(中央公論新社刊)の著者・山川徹氏が取材した。

 * * *
 桜のジャージを着て戦う16度目のゲームに対して、ヴィンピー・ファンデルヴァルトは特別な気持ちで臨んでいた。

「相手がとても強いことは分かっていた。すごく緊張しましたね」

 南アフリカ出身のヴィンピーにとって、W杯準々決勝の相手は母国。“スプリングボクス”の愛称で親しまれる代表チームに、ヴィンピーも子どもの頃から「めちゃくちゃ憧れていた」からだ。

ヴィンピー・ファンデルヴァルト(撮影/杉原照夫)

ヴィンピー・ファンデルヴァルト(撮影/杉原照夫)

「昔から仲がよかった選手も出場していました。結果は残念でしたが、世界トップとの差は詰められた。W杯で日本の代表として応援してもらいながら南アと戦えたのは、光栄で幸せでした」

 ヴィンピーが日本ラグビーを知ったのは、2011年W杯。ボールを早く動かすラグビーに衝撃を受ける。

 2年後に来日し、NTTドコモでプレーを続けるうち日本代表が目標となった。ラグビーのスタイルが自分に合っていると実感したからだ。

 W杯の舞台は6年間暮らした日本。2人の娘も日本生まれ。だからこそ、南ア戦直後のコメントには素直な実感がこもる。

「日本のために全力を尽くしたことを、誇りに思っている……」

 今シーズン、日本戦で2トライを奪った南ア代表のマカゾレ・マピンピが、ヴィンピーと同じNTTドコモに加入した。

「彼はとても気さくな人で、よく話しますが、あの試合については話していない。だって、いまもまだくやしいからね」

 コロナ自粛中、南アに一時帰国した。知人たちは「あんなにハードワークできるチームはほかにない」と口々に賞賛する。ヴィンピーは“日本代表の誇り”を改めてかみ締めた。日本だけでなく、世界中のファンに愛されているんだな、と。

関連記事

トピックス

初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
芸能活動を再開することがわかった新井浩文(時事通信フォト)
「ウチも性格上ぱぁ~っと言いたいタイプ」俳優・新井浩文が激ヤセ乗り越えて“1日限定”の舞台復帰を選んだ背景
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
小説「ロリータ」からの引用か(Aでメイン、民主党資料より)
《女性たちの胸元、足、腰に書き込まれた文字の不気味…》10代少女らが被害を受けた闇深い人身売買事件で写真公開 米・心理学者が分析する“嫌悪される理由”とは
NEWSポストセブン
ラオスを訪問された愛子さま(写真/共同通信社)
《「水光肌メイク」に絶賛の声》愛子さま「内側から発光しているようなツヤ感」の美肌の秘密 美容関係者は「清潔感・品格・フレッシュさの三拍子がそろった理想の皇族メイク」と分析
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン