ライフ

ホームヘルパーの叫び「現状を知って!」 時間と規制でがんじがらめ

(イラスト/やまなかゆうこ)

老親が自分らしく生きるためにはヘルパーの助けが不可欠(イラスト/やまなかゆうこ)

 助けを必要としている人が、できる限り“自分らしい”生活を送れるように──介護職と家族は本来、同じ方向を目指しているはずだが、ちょっとしたボタンの掛け違いから、対立関係になってしまうケースは少なくない。こういった状況について、ホームヘルパーの藤原るかさんが語る。

 * * *
 本来介護は長年の生活の中で培われた“本人らしさ” を守るための支援。ヘルパーが行う生活援助や身体介護は、たとえばどんな味付けが好みか、どんな部屋が落ち着くか、何が不快で何に困っているか……など、ご本人やご家族とのコミュニケーションを通し、よく理解した上で行うのが理想なのです。

 しかし、現状の介護保険制度ではそういった話し相手などの相談業務はケアマネジャーさんの仕事。ヘルパーは分刻みで仕事をこなさねばならない仕組みになっていて、いちばん身近に接しながらゆっくりお話しする余裕がまったくありません。ヘルパーによっては“話しかけないでオーラ”を出してしまうかも(笑い)。

 家族にも言えないご本人の本音も、直接感じられるヘルパーの本領を発揮しきれないのが本当に悔しい。それが実状です。

 介護保険制度はまだまだ未成熟なのです。その複雑さゆえ、お任せになっている利用者(本人や家族)が多いのも現実。これから保険料も上がっていくのにそれでいいの? わからないこと、使いにくいこと、もっと利用者が声を上げるべきだと思います。渦中にいると声を上げにくいこともありますが、自分のこととして関心をもって。

 それから長くヘルパーをやってきて思うのは「介護は生活」ということ。介護で困り事が起きたときは、慌てて正解を求めず、ゆったり構えて“どうしたらよいか”を介護職と一緒に考える姿勢でいると、よいのではないでしょうか。

【プロフィール】
藤原るか/訪問介護事業所NPO法人グレースケア機構所属登録ヘルパー。公務員ヘルパーとして勤務開始以来、30年近いキャリアを持つベテラン。在宅ヘルパーの労働条件向上、介護環境の適正化を求める国家賠償訴訟の裁判中。「共に介護を学び合い・励まし合いネットワーク」主宰。著書に『介護ヘルパーは見た』(幻冬舎新書)など。

※女性セブン2021年2月4日号

関連記事

トピックス

次の首相の後任はどうなるのか(時事通信フォト)
《自民党総裁有力候補に党内から不安》高市早苗氏は「右過ぎて参政党と連立なんてことも言い出しかねない」、小泉進次郎氏は「中身の薄さはいかんともしがたい」の評
NEWSポストセブン
チームには多くの不安材料が
《大谷翔平のポストシーズンに不安材料》ドジャースで深刻な「セットアッパー&クローザー不足」、大谷をクローザーで起用するプランもあるか
週刊ポスト
ブリトニー・スピアーズ(時事通信フォト)
《ブリトニー・スピアーズの現在》“スケ感がスゴい”レオタード姿を公開…腰をくねらせ胸元をさすって踊る様子に「誰か助けてあげられないか?」とファンが心配 
NEWSポストセブン
政権の命運を握る存在に(時事通信フォト)
《岸田文雄・前首相の奸計》「加藤の乱」から学んだ倒閣運動 石破降ろしの汚れ役は旧安倍派や麻生派にやらせ、自らはキャスティングボートを握った
週刊ポスト
2013年に結婚した北島康介と音楽ユニット「girl next door」の千紗
《不倫報道で沈黙続ける北島康介》元ボーカル妻が過ごす「いつも通りの日常」SNSで垣間見えた“現在の夫婦関係”
NEWSポストセブン
秋篠宮家の長男・悠仁さまの成年式が行われた(2025年9月6日、写真/宮内庁提供)
《凜々しきお姿》成年式に臨まれた悠仁さま 筑波大では「やどかり祭」でご友人とベビーカステラを販売、自転車で構内を移動する充実したキャンパスライフ
NEWSポストセブン
趣里(左)の結婚発表に沈黙を貫く水谷豊(右=Getty Images)
趣里の結婚発表に沈黙を貫く水谷豊、父と娘の“絶妙な距離感” 周囲が気を揉む水谷監督映画での「初共演」への影響
週刊ポスト
宮路拓馬・外務副大臣に“高額支出”の謎(時事通信フォト)
【スクープ】“石破首相の側近”宮路拓馬・外務副大臣が3年間で「地球24週分のガソリン代」を政治資金から支出 事務所は「政治活動にかかる経費」と主張
週刊ポスト
自身のYouTubeで新居のルームツアー動画を公開した板野友美(YouTubeより)
《超高級バッグ90個ズラリ!》板野友美「家賃110万円マンション」「エルメス、シャネル」超絶な財力の源泉となった“経営するブランドのパワー” 専門家は「20~30代の支持」と指摘
NEWSポストセブン
高校ゴルフ界の名門・沖学園(福岡県博多区)の男子寮で起きた寮長による寮生らへの暴力行為が明らかになった(左上・HPより)
《お前ら今日中に殺すからな》ゴルフの名門・沖学園「解雇寮長の暴力事案」被害生徒の保護者らが告発、写真に残された“蹴り、殴打、首絞め”の傷跡と「仕置き部屋」の存在
NEWSポストセブン
指定暴力団山口組総本部(時事通信フォト)
《外道の行い》六代目山口組が「特殊詐欺や闇バイト関与禁止」の厳守事項を通知した裏事情 ルールよりシノギを優先する現実“若いヤクザは仁義より金、任侠道は通じない”
NEWSポストセブン
志村けんさんが語っていた旅館への想い
《5年間空き家だった志村けんさんの豪邸が更地に》大手不動産会社に売却された土地の今後…実兄は「遺品は愛用していた帽子を持って帰っただけ」
NEWSポストセブン