ライフ

要介護者の家族が知っておくべき現実と「介護保険制度の問題」

(イラスト/やまなかゆうこ)

ヘルパーと家族は、本来同盟を組んだ仲間(イラスト/やまなかゆうこ)

 要介護者が自立した生活が送れるように支えることが、家族と介護職の目指すゴール。しかし、片や家族の情にほだされ、片や介護保険制度や仕組みに翻弄され、家族と介護職が対立してしまうことも少なくない。

 そんな望まざる展開を避けるために、家族は介護の何を知ってどう歩み寄るべきか──。訪問介護事業を行う「株式会社でぃぐにてぃ」の創業者で、自身も19才のときに事故で四肢麻痺となり在宅介護を受けてきた吉田真一さんに話を聞いた。

 * * *
 訪問介護事業所を経営して7年。要介護者になってからは30年近く。生活にヘルパーさんが介入するストレス、介助してもらうおかげで家族の中で自立できる喜びはもちろん、介護家族である妻の葛藤も肌身に感じ、「介護を受けるプロ」とも呼ばれています(笑い)。

 訪問ヘルパーとご家族とのトラブル……介護事業所の立場からは言いにくいことですが、ヘルパーという職業はスキルにかなり個人差があります。いまは介護職員初任者研修130時間のみで入職してくる。医師のような専門性はありません。

 ベテランで秀逸なスキルを持つ人もいますが、みんなではない。

 もう1つは介護保険制度の問題。たとえば生活援助では本人以外の食器洗いは皿1枚でもできないのが介護保険のルール。

 本人、家族、ヘタをすると新人ヘルパーもルールに不慣れで、家族の皿を洗うかどうかといったことでもめることはよくあります。

 制度の改善の余地は大いにあり、超高齢社会の一員としてはもっとしっかり学ぶべきですが、そんな現状であることも知っておいてほしい。

 介護職と家族の間には敵対する種があちこちにあることも否めませんが、忘れてならないのは、私たちの縁由がひとりの要介護者である親御さんの幸せを守るために生まれた関係であること。いわば同盟を組んだ仲間です。

 不都合を見つけて言い募るより、互いに歩み寄って改善を試みる方が、絶対幸せに近づけるとぼくは思います。

【プロフィール】
吉田真一さん/19才のとき事故で四肢麻痺に。在宅介護を受けながら大学卒業後、企業勤務を経て、訪問介護事業を行う株式会社でぃぐにてぃ創業。介護を受ける立場、介護家族である妻の苦労を知る立場から湧く理念「世界いち気持ちいい介護」の実現を目指して奮闘中。電動車いすの介護福祉経営士。

取材・文/斉藤直子

※女性セブン2021年2月4日号

関連記事

トピックス

事件に巻き込まれた竹内朋香さん(27)の夫が取材に思いを明かした
【独自】「死んだら終わりなんだよ!」「妻が殺される理由なんてない」“両手ナイフ男”に襲われたガールズバー店長・竹内朋香さんの夫が怒りの告白「容疑者と飲んだこともあるよ」
NEWSポストセブン
4月は甲斐拓也(左)を評価していた阿部慎之助監督だが…
《巨人・阿部監督を悩ませる正捕手問題》15億円で獲得した甲斐拓也の出番減少、投手陣は相次いで他の捕手への絶賛 達川光男氏は「甲斐は繊細なんですよね」と現状分析
週刊ポスト
第一子となる長女が誕生した大谷翔平と真美子さん
《左耳に2つのピアスが》地元メディアが「真美子さん」のディープフェイク映像を公開、大谷は「妻の露出に気を使う」スタンス…関係者は「驚きました」
NEWSポストセブン
防犯カメラが捉えた緊迫の一幕とは──
「服のはだけた女性がビクビクと痙攣して…」防犯カメラが捉えた“両手ナイフ男”の逮捕劇と、〈浜松一飲めるガールズバー〉から失われた日常【浜松市ガールズバー店員刺殺】
NEWSポストセブン
和久井学被告と、当時25歳だった元キャバクラ店経営者の女性・Aさん
【新宿タワマン殺人・初公判】「オフ会でBBQ、2人でお台場デートにも…」和久井学被告の弁護人が主張した25歳被害女性の「振る舞い」
NEWSポストセブン
竹内朋香さん(27)と伊藤凛さん(26)は、ものの数分間のうちに刺殺されたとされている(飲食店紹介サイトより。現在は削除済み)
「ギャー!!と悲鳴が…」「血のついた黒い服の切れ端がたくさん…」常連客の山下市郎容疑者が“ククリナイフ”で深夜のバーを襲撃《浜松市ガールズバー店員刺殺》
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(Instagramより)
《愛するネコは無事発見》遠野なぎこが明かしていた「冷房嫌い」 夏でもヒートテックで「眠っている間に脱水症状」も 【遺体の身元確認中】
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年6月4日、撮影/JMPA)
「佳子さまは大学院で学位取得」とブラジル大手通信社が“学歴デマ報道”  宮内庁は「全報道への対応は困難。訂正は求めていません」と回答
NEWSポストセブン
米田
「元祖二刀流」の米田哲也氏が大谷翔平の打撃を「乗っているよな」と評す 缶チューハイ万引き逮捕後初告白で「巨人に移籍していれば投手本塁打数は歴代1位だった」と語る
NEWSポストセブン
花田優一が語った福田典子アナへの“熱い愛”
《福田典子アナへの“熱い愛”を直撃》花田優一が語った新恋人との生活と再婚の可能性「お互いのリズムで足並みを揃えながら、寄り添って進んでいこうと思います」
週刊ポスト
生成AIを用いた佳子さまの動画が拡散されている(時事通信フォト)
「佳子さまの水着姿」「佳子さまダンス」…拡散する生成AI“ディープフェイク”に宮内庁は「必要に応じて警察庁を始めとする関係省庁等と対応を行う」
NEWSポストセブン
まだ重要な問題が残されている(中居正広氏/時事通信フォト)
中居正広氏と被害女性Aさんの“事案後のメール”に「フジ幹部B氏」が繰り返し登場する動かぬ証拠 「業務の延長線上」だったのか、残された最後の問題
週刊ポスト