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“ばぁば”鈴木登紀子さんが夫のために作った「卵だけ炒飯」

ばぁばこと、鈴木登紀子さん

ばぁばこと、鈴木登紀子さん

“ばぁば”の愛称で親しまれた日本料理家の鈴木登紀子さんが、2020年12月28日に亡くなった。96才だった。ばぁばは生前、『女性セブン』で長きに渡りエッセイを綴り、食文化に関する貴重な知見も残すと同時に、金言ともいえる“珠玉のお小言”も発信してきた。そのいくつかを紹介する。

「無理はしないことよ」

「仕事をしながら家事もこなして出産、育児。やっと子供がひとり立ちしたと思えば更年期。そうこうするうちに孫が生まれて……と、女の一生は山あり谷ありの人生劇場です。

 だから疲れたときは無理をしないこと。食事の支度もそこそこでいいの。また笑顔でいられるよう『今日はお休み!』と決めて、ゴロゴロしていらっしゃいませ」

「“すみません”よりも“ありがとう”」

「年を取りましたらね、ひと様のご厚意には素直に甘えた方がかわいげがあります。

 ばぁばは何かをお願いしたいときには素直に『ありがとう、助かります』とすぐに頭を下げます。しかし、自分でできる、したいと思ったことは『ありがとう、でもご心配なく』と、やはり感謝の言葉を添えて辞退します。大騒ぎした挙げ句、結局人にやらせる厚かましいばぁ様にはなりたくないのです。

 ひと様の手を借りるのは恥ではありません。厚意と時間を無駄にすることが恥なのです」

「パパがいちばん大事。私たちに言葉は不要でした」

「パパ(夫・清佐さん。2009年に逝去)は生涯、お料理はもちろん、お台所に入ることすらありませんでした。無口でけんかにもならなかった(笑い)。私が一方的に話してパパが黙って聞き、ひと言返して終わるのが常でした。

 お料理に関しても、『これはおいしいねえ』と褒めるか、恨めしそうに私の顔をじっと見つめて残すかで、『あら、ごめんなさいね』と私も流すの。阿吽の呼吸を体得しながらの60年間だった気がします。

 晩年は老老介護となり、ソファで眠るように亡くなりました。『なぜひとりで逝っちゃうの?』と恨みましたが、それはもうずうっと寂しくて、お料理をしているときだけ忘れられるの。きっと、パパが、いつか今世を去るときのために、私に仕事を遺していってくれたんじゃないかしら。

 何度か夢枕に立ったことはありますが、やっとお迎えかしら?と思ったらすーっと消えちゃうし、どうもあまり私にあちらへ来てほしくないみたいなのよね(笑い)」

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