2020年入社の野村彩也子アナ(写真/ロケットパンチ)
視聴者の皆さんで「あ、野村彩也子アナが出てる!」とわかった方はまだ多くはないだろう。私でさえ、最初は、この女優さん、なんていう名前だろう? どんな役で出るんだろう?と勘違いしてしまったぐらい。
というのも、野村アナは、長瀬や桐谷、永山らと同じサイズで“顔出し”し(←これは野村アナの責任ではないのだが)、女子アナというよりは“共演女優”のような表情と、尋常ではない目ヂカラでモニターを見つめていたからだ。
一方、局アナとしての“わきまえ”が完璧で、どんなときにも決してタレントより前に出ることのない安住紳一郎アナは椅子を後ろに下げていたのだろうか。顔のサイズを小さく見せていたのだからスゴイ。
他の女性アナウンサーが出ていても同じようなことになる? それはどうだろう。例えば、昨年末、同番組のクリスマススペシャルに出ていた日比麻音子アナは、“現れ”が、ちゃんと“局アナ”だった。
野村アナについては、番組中盤、手持ちフリップを出し始めるようになってから、やっと「女子アナなんだ」「そうだった、野村萬斎さんの娘さんだ」とわかった視聴者が増え始めたのではないか。
ところが、ダメ押しされるような場面があった。桐谷健太が『俺の家の話』での役どころを説明し始めたときのことだ。ちなみに桐谷は、西田敏行演じる「能楽」の観山流宗家・観山寿三郎の芸養子・寿限無である。
続いて「家がすごい広くて稽古場とかがあって」とセットの説明を始めたのは長男・寿一役の長瀬。続いて「野村さんの御自宅も、そういうカンジなんですか?」と聞いたのである。
これはスゴイ。金曜ドラマの主演俳優が、わざわざ入社1年目の新人アナをたてる質問をするとは……。台本にそうあった? カンペが出た? それとも長瀬くんのサービス? いやそこは断っても問題なかったと思うのだが。
ここからの野村アナの堂々とした様子は、やはり“大物”感に溢れるものだった。「地下に稽古場があって」「特別に木から選んで」と全く躊躇することなくスラスラ答え始めたのである。
その昔、局アナは自分の話をしないように叩き込まれていたものだ。アナウンサーはあくまで“聞き手”。たとえば局アナにインタビューや鼎談への出席をお願いすると、現場に広報担当や番組プロデューサーが付きっきりになって文言のチェックをする。もちろん、校正でも、アナウンサーの“意見”や“プライバシー”には赤が入ってくる。
局アナがフリーになり、番組コメンテーターやバラエティのヒナ壇に座っても、当初いい仕事ができないのは、これが理由でもある。しかも局アナ時代、仕切りに定評があった者であればあるほど、MCから質問されて、また質問で返してしまうことも少なくない。