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稽古に密着 渡辺えり&八嶋智人、コロナ禍で思い出した芝居の原点

渡辺えり、八嶋智人。演劇人のふたりがコロナ禍で感じたこととは?

渡辺えり、八嶋智人。演劇人のふたりがコロナ禍で感じたこととは?

 やはり、稽古場にただよう空気がいつもとは違う。マスクのせいで役者の表情が見えない。声も少しくぐもっていて聞こえにくい。激しい動きになると呼吸も苦しそうだ。そんな不自由な環境下で、主演の渡辺えり(66)と八嶋智人(50)をはじめとする役者たちは連日稽古に汗を流し続けている。

 2月1日から新橋演舞場で始まる「喜劇 お染与太郎珍道中」の稽古が佳境を迎えている。物語は、米問屋の箱入り娘のお染(渡辺えり)とお人好しの付き人(八嶋智人)が江戸から京都へと旅する珍道中。五十三次をゆく間にさまざまな騒動が巻き起こるという喜劇だ。42年前に京塚昌子と三木のり平が好演した舞台である。

「人間にとって大事なのは、目に見えない愛や力みたいなものだということをわがまま娘が道中で学んでいくというストーリー。コロナ禍前に決まった企画なんですが、偶然にもいまにこそ相応しい喜劇になっている」

 と渡辺は言う。2020年は、渡辺と八嶋にとって、演劇人としての生き方を問われた1年でもあった。

「生の演劇は、こちらから作品を提供し、目の前のお客さんが受け止め喜んでくれるのが前提。でも、それがコロナ禍によってすべて絶たれてしまった。20年来構想してきた作品も直前で中止になった。いままでコツコツと積み上げてきたことが、延期や中止になると、自分が表現者としてやってきたことが、全部否定されたような気持ちにもなるんです。自分の存在価値はない、死んだほうがいいのかとさえ思った」(渡辺)

 一方、苦境に立たされたことで、ふたりは共に、最初に芝居と接した原点を思い出したと言う。上京し、食うものも食わず演劇や映画に没頭した日々だ。渡辺はいま、改めてアートやエンタテインメントが人間にとっていかに大切かを認識していると語る。

「古代ギリシャ時代は、医療のひとつとして演劇は上演されていた。芸術、娯楽を含め、夢を作ること、与えられることが最も気持ちが解放されるし、人間には必要なんです。コロナ禍でみんなが精神的に辛い思いをしているからこそ、今回の喜劇をやりたいし、見ていただきたい。大笑いし、大泣きして、癒してほしい」

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