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コロナ禍で“受診控え”をする人が増加 医療費削減の期待も

(写真/GettyImages)

肺炎やインフルエンザ、呼吸器系疾患の死者数は大幅に減少(写真/GettyImages)

 まさに、禍福は糾える縄の如し。「病院」という存在もまた、病気やけがを治すという「福」を招くと同時に、時に命を奪う「禍」になりうる。コロナ騒動で病院には感染リスクがあるということで“受診控え”をする人が増え、その結果、医療ミスや過剰医療などによって、体調不良や病気が引き起こされる「医原病」が減った可能性があるのだ。

 厚生労働省が公表する死因別死者数(昨年1~8月の数値)によると、肺炎、インフルエンザに加え、急性気管支炎、慢性閉塞性肺疾患などを含む呼吸器系疾患において、前年同月期よりも死者数は大幅に減少している。

 日本人の死因トップであるがんはどうだろうか。昨年1~8月の悪性新生物(腫瘍)の死亡者数は24万9151人で、前年同期の24万7908人を1243人上回った。ただしなかには、食道、胃、直腸など前年より死者が減少したがんもある。がんの場合、診断や治療に一定の時間がかかるため、受診控えが直ちに死者の増減にはつながらないと考えられる。

 一方で、『医者に殺されない47の心得』の著者で、医師の近藤誠さんは、「コロナによってがん検診受診者が減ったので、今後はがんの死者も減少すると期待できます」とがんの死者数の動向に注目する。

「そもそもがん検診によって健康な人にがんが見つかると、その後の手術や抗がん剤治療の影響で死亡数が増加するとの研究もあります。加えて、がんの手術には、正常組織にメスを入れてがん細胞を抑える抵抗力を破壊し、がんの増殖を加速させるリスクがある。また、複数のがんで標準治療になっている抗がん剤『ドセタキセル』は副作用が強く、心肺や骨髄、腎臓の機能が低下して急死するリスクがあります。

 さらにがん検診で利用するCT検査には被曝リスクがあり、オーストラリアの調査では未成年者の場合、CT検査1回につき発がん率が16%ずつ上昇しました。3回受ければ48%増しです。がんは検診、手術、治療といずれも医原病のリスクがあるのです」(近藤さん)

 この先、受診控えによって医原病を免れたがんの死者が減少する可能性があるという見立てだ。

 大切なことは、今回の経験を貴重な機会として、今後に生かすことではないか。精神科医の和田秀樹さんが言う。

「コロナで死者が減少した要因は、感染予防により感染症全般が減少したことが最も大きく、続いて受診控えによる医原病の減少が影響したと考えられます。このまま、日本社会がコロナによって生じた『医者に行かなくても平気じゃん』というトレンドを維持できれば、社会問題である医療費削減も同時に目指せます。

 今回のコロナによる死者は1万人程度にはなるでしょう。しかし、それが本当にコロナウイルスによる死亡だったのかどうか、怖がりすぎていなかったかどうかの検証も必要です。今後も数年に1度は新型コロナのような感染症が出るかもしれないので、そのときの判断材料にするためにも、現状のデータをきっちり集めて分析を進めるべきです」

 コロナは新たな「常識」を私たちに突きつけている。

※女性セブン2021年2月11日号

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