スポーツ

「中継ぎ投手」地位向上の歴史 横浜の厳冬更改、岩瀬・藤川の登場…

新人時代の中日・岩瀬仁紀は中継ぎとしてリーグ最多の65試合に登板(1999年。時事通信フォト)

新人時代の中日・岩瀬仁紀は中継ぎとしてリーグ最多の65試合に登板(1999年。時事通信フォト)

 先発完投が当たり前だった昭和のプロ野球では、投手がリリーフの役割を与えられることは「降格」と考えられていた。その潮目を変えたのは、江夏豊の存在だった。阪神のエースだった江夏は、南海にトレードされた後に野村克也兼任監督に口説かれ、抑えに転向。その後、移籍先の広島、日本ハムに栄冠をもたらし、セパ両リーグでMVPに輝いた。江夏は1983年からの2年間7800万円(推定。以下同)で、球界最高年俸の地位に座った。

 優勝請負人と呼ばれた男の活躍で、リリーフの役目は徐々に見直されていった。しかし、抑えより前の回を任される中継ぎは低く評価されたままだった。野球担当記者が振り返る。

「落合博満が中日の提示額を不服として調停にかけた30年前の1991年、球界の年俸ベスト20入りしたリリーフ投手は郭源治(中日)のみでした。1992年も郭のみ(1億円・6位タイ)で、前年の日本一である西武の鹿取義隆が8200万円で22位、セ・リーグ覇者の広島の大野豊が7500万円で27位。当時は今以上に打者のほうが稼いでいる時代で、ベストテンの中に投手は郭と桑田真澄(巨人)の2人しかいません」(以下同)

 完投数を見ると、2020年はセ・リーグが36、パ・リーグが19しかない。一方、1991年のセは200、パは234に上っている。当時、リリーフが年俸ランキングで上位に入らなくても仕方なかった側面もあるかもしれない。1990年代半ばになると中継ぎの出番が多くなり、1996年に中継ぎ投手の賞が新設された。

「中継ぎを表彰しようという案がシーズン中の7月に出ました。しかし、セパの足並みが揃わず、セは『最優秀リリーフポイント投手賞』で河野博文(巨人)、パは『最多ホールド投手賞』で島崎毅(日本ハム)が受賞しました。名称が違うことからもわかるように、両リーグで評価方法が異なった。しかも、セは連盟表彰ではなく特別表彰で、賞品は100万円相当のパリ・ペア旅行。中途半端な印象が拭えませんでした」

 1998年、中継ぎの台頭がクローズアップされる。横浜の抑えの佐々木主浩が防御率0.64とほぼ完璧な投球を見せて45セーブでMVPに。9回に繋ぐ島田直也、阿波野秀幸、横山道哉、関口伊織、五十嵐英樹など中継ぎ陣が貴重な役割を果たし、チームは38年ぶりの日本一に輝いた。わずか8完投での優勝は、完投至上主義のプロ野球界に衝撃を与えた。

関連キーワード

関連記事

トピックス

役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さんが今も築地本願寺を訪れる理由とは…?(事務所提供)
《笑福亭笑瓶さんの月命日に今も必ず墓参り》俳優・山口良一(70)が2年半、毎月22日に築地本願寺で眠る亡き親友に手を合わせる理由
NEWSポストセブン
高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
浅香光代さんと内縁の夫・世志凡太氏
《訃報》コメディアン・世志凡太さん逝去、音楽プロデューサーとして「フィンガー5」を世に送り出し…直近で明かしていた現在の生活「周囲は“浅香光代さんの夫”と認識しています」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月20日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン