最近のホンダは「実用」に全集中
エモーショナルな部分を捨てて実用に全集中するというアプローチは、最近のホンダの大衆車づくりの特徴でもある。N-BOXも意匠性やカラクリという点ではライバルよりずっと簡素だし、サブコンパクトクラスの「フィット」、コンパクトクラスの「シビックハッチバック」なども実用と動的質感の一点張りだ。
これは大衆車ビジネスにおいては結構険しい道である。“いいクルマづくり”は自動車業界で誰もが口にする合言葉のようなものだが、とりわけ大衆車クラスにおいて、クルマを本質的に良くしたり走行に関する機能を充実させたりといったことは費用がかかるわりにセールスに結びつきにくい。
軽自動車やサブコンパクトのユーザーは通常はクルマで長旅などしないし、高速走行の機会も少ない。お買い物や通勤、送迎などで近場を乗り回すだけなら、クルマが本質的に優れている必要はないのだ。
燃費性能は全般的に優れている(ホンダN-WGN)
訴求力高めなければ「お金のかけ損」
N-WGNはとりあえずワゴンRやスライドドアのキャンバスを除くムーヴとは販売台数でいい勝負を演じているが、月平均7000台というホンダの目標値には届いていない。
ホンダの目指すクルマづくりがどこまでユーザーに伝わるか(N-WGN)
挽回を図るためには、車内や荷室のパッケージングを緻密に設計することやADASを充実させることで、どんなに安いモデルでもアクティブなカーライフを楽しめるようにするのがホンダの目指すクルマづくりなのだということをもっと分かりやすい形でユーザーに訴えかけ、理解してもらう姿勢が必要だ。
わざわざお高いクルマづくりをしているのだから、ただでさえホンダの軽自動車ビジネスの収益性は非常に悪い。それができなければ、単にお金のかけ損に終わってしまう。