ボカロPとタッグを組む“歌い手”と呼ばれるシンガーは数多くいるものの、なぜAdoにここまで注目が集まっているのだろうか。「うっせぇわ」の特設サイトでAdoの公式インタビューを担当した、ボカロP/歌い手シーンに詳しいライターの小町碧音氏はこのように解説する。

「歌い手といえば、これまで注目されてきたのは、まふまふ、そらる、天月-あまつき-などの男性歌い手です。そんななか、Adoは、女性ながらに男性顔負けの変幻自在なボーカリゼーションで、パンチの効いたダークな楽曲をいとも簡単に歌い上げる鬼才なんです。

 それでいてAdoの歌声は、昨今の歌い手界隈においてよく歌われているパンチの効いたダークな楽曲との親和性が非常に高い。歌い手=男性のイメージを覆したともいえるAdoは、既存の歌い手界隈の新たな地平を切り拓く救世主のような存在です」

 ではそうした“救世主のような存在”であるAdoが、「うっせぇわ」という楽曲で大きな反響を呼んでいるのは何故なのか。小町氏は続ける。

「なかでも、話題沸騰中のメジャーデビュー曲『うっせぇわ』がここまで聴かれている理由は、Adoの歌声が、現代社会への不満を徹底的に殴り飛ばすほどのエモーショナルさに満ちていることに尽きます。“エモい”という言葉は流行っていますが、この“エモい”を求めるいまの時代に合っているのも、まさに歌い手界隈から誕生したAdoの歌声なのです」

 Adoの魅力はその“エモさ”にあるようだ。近年若者の間でスラングとして用いられている“エモい”という言葉は、多義的で漠然としているが、少なからず「エモーション=感情」に訴えかけるものであることを意味する。感情を揺さぶるAdoの音楽が、時代の感覚と響き合っているということなのかもしれない。

◆取材・文/細田成嗣(HEW)

 

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