国内

「川淵会長」案は「森院政」発言と「あの疑惑」で吹っ飛んだ

密室談合で後継を決めようということ自体、反省の色は見えない(森氏と川淵氏=共同)

密室談合で後継を決めようということ自体、反省の色は見えない(森氏と川淵氏=共同)

「東京五輪のドン」である森喜朗氏の女性蔑視発言から始まった五輪組織委員会の後任会長選びは、森氏が後継指名した川淵三郎・元日本サッカー協会会長の就任が突然、白紙撤回された。何があったのか。

「森さんは後任選びで目立ちすぎたし、川淵さんはしゃべりすぎた。これじゃ森院政のイメージが強くなりすぎて世論の批判をかわせないから、官邸から“待った”がかかった」(組織委関係者)

 菅義偉・首相は森氏の失言を国会で追及されると、「私が判断する問題ではない」「(組織委は)独立した組織だ」と逃げ回ったが、自らが矢面に立ちたくないだけなのは誰が見ても明らかだった。ある自民党幹部は、後任会長人事をめぐっては、森氏と菅義偉・首相の間には最初から亀裂があったと語る。

「総理としては、国際的批判に答えるためには後任は女性会長が望ましいという意向を森さんに伝えた。しかし、森さんは耳を貸さなかった」

 このままでは“わきまえない”女性会長が選ばれかねないと焦ったのか、辞任を覚悟してからの森氏の動きは早かった。正式な辞任表明の前日(2月11日)に、川淵氏と会談して会長就任を要請すると、川淵氏は記者団に「残る人生のベストを尽くしたい」と就任受諾の意向を表明、2人だけでさっさと後継のレールを敷いた。川淵氏は組織委員会評議員で選手村村長を務めている。森氏と近い“五輪ムラ”の住人に会長ポストを禅譲しようとしたのだ。

 森氏は、2000年に小渕恵三・首相の急死で首相に就任する際、自民党内の正式な手続きを踏まずに、党実力者たちの「密室の談合」で選ばれたと批判され続けたが、組織委員会の後任選びも「密室」で決めようとした。しかし、その川淵氏がしゃべりすぎた。

 まだ組織委から正式なオファーもないのに、「自分が(会長を)受けるならば、森さんには相談役でサポートしてほしいとお願いした」と、会談で森氏の延命まで相談していたことを記者団にペラペラと明かしてしまった。

 そもそも川淵氏はツイッターで「無観客は開催の意味がない」(1月13日)と発言するなど、「無観客開催」を視野に入れているバッハIOC会長とは意見の違いがあり、IOCとの交渉力が問題視されていたが、「森院政」発言が致命傷になった。

 翌12日朝、橋本聖子・五輪相が閣議後会見で、川淵氏の就任について「全く決まっていない」「何ら決定していない」と強調。「多くの皆さんの意見を聞きながら決定されていくという、どの公益財団法人にもあるような正式な手続きを踏まれていくことが望ましい」と、川淵後継に難色を示した。

「総理は森さんが後継指名したのでは世論が納得しないと判断した。川淵後継案を白紙に戻し、森さんに一度は蹴られた女性会長を軸にした選考のやり直しを指示した」(官邸スタッフ)

 もうひとつ、官邸の「身体検査」で問題視されたという見方もある。

関連キーワード

関連記事

トピックス

憔悴した様子の永野芽郁
《憔悴の近影》永野芽郁、頬がこけ、目元を腫らして…移動時には“厳戒態勢”「事務所車までダッシュ」【田中圭との不倫報道】
NEWSポストセブン
現行犯逮捕された戸田容疑者と、血痕が残っていた犯行直後の現場(左・時事通信社)
【東大前駅・無差別殺人未遂】「この辺りはみんなエリート。ご近所の親は大学教授、子供は旧帝大…」“教育虐待”訴える戸田佳孝容疑者(43)が育った“インテリ住宅街”
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
【エッセイ連載再開】元フジテレビアナ・渡邊渚さんが綴る近況「目に見えない恐怖と戦う日々」「夢と現実の区別がつかなくなる」
NEWSポストセブン
『続・続・最後から二番目の恋』が放送中
ドラマ『続・続・最後から二番目の恋』も大好評 いつまでのその言動に注目が集まる小泉今日子のカッコよさ
女性セブン
事務所独立と妊娠を発表した中川翔子。
【独占・中川翔子】妊娠・独立発表後初インタビュー 今の本音を直撃! そして“整形疑惑”も出た「最近やめた2つのこと」
NEWSポストセブン
名物企画ENT座談会を開催(左から中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏/撮影=山崎力夫)
【江本孟紀氏×中畑清氏×達川光男氏】解説者3人が阿部巨人の課題を指摘「マー君は二軍で当然」「二軍の年俸が10億円」「マルティネスは明らかに練習不足」
週刊ポスト
田中圭
《田中圭が永野芽郁を招き入れた“別宅”》奥さんや子どもに迷惑かけられない…深酒後は元タレント妻に配慮して自宅回避の“家庭事情”
NEWSポストセブン
ニセコアンヌプリは世界的なスキー場のある山としても知られている(時事通信フォト)
《じわじわ広がる中国バブル崩壊》建設費用踏み倒し、訪日観光客大量キャンセルに「泣くしかない」人たち「日本の話なんかどうでもいいと言われて唖然とした」
NEWSポストセブン
ラッパーとして活動する時期も(YouTubeより。現在は削除済み)
《川崎ストーカー死体遺棄事件》警察の対応に高まる批判 Googleマップに「臨港クズ警察署」、署の前で抗議の声があがり、機動隊が待機する事態に
NEWSポストセブン
北海道札幌市にある建設会社「花井組」SNSでは社長が従業員に暴力を振るう動画が拡散されている(HPより、現在は削除済み)
《暴力動画拡散の花井組》 上半身裸で入れ墨を見せつけ、アウトロー漫画のLINEスタンプ…元従業員が明かした「ヤクザに強烈な憧れがある」 加害社長の素顔
NEWSポストセブン
趣里と父親である水谷豊
《趣里が結婚発表へ》父の水谷豊は“一切干渉しない”スタンス、愛情溢れる娘と設立した「新会社」の存在
NEWSポストセブン
米利休氏のTikTok「保証年収15万円」
東大卒でも〈年収15万円〉…廃業寸前ギリギリ米農家のリアルとは《寄せられた「月収ではなくて?」「もっとマシなウソをつけ」の声に反論》
NEWSポストセブン