野口さんの情けない話は、気の毒ではあるが、他人にとっては笑い話になることだろう。だが一方で、こうしたアプリを悪用する例もある。
「若い女性のフリをし、SNS上で詐欺行為をしている人間がいるんです。海外の女性タレント、モデルの写真を使い、女性になりすましてSNSアカウントを作成するのが今までのパターンでしたが、違和感がない異性化も可能な画像加工アプリを使えば、いろんな表情パターンも作成できます。それを悪用して、まずセクシーに誘惑するような写真を相手に送りつけ、詐欺のフィールドへ誘い込むのです」(ITジャーナリスト)
美しい女性にSNS上で声をかけられたかと思い舞い上がるが、数度のやり取りの中で、女性のさまざまな表情を捉えた写真を見てさらに気に入る。そんなタイミングで女性は「投資話がある」だの「母親が病気で金を貸して欲しい」などと言ってくるのだという。文字だけでのやりとりであれば不信感を抱きやすいが、実際にいそうな「女性」のさまざまな表情まで知ってしまった被害者は、その女性をとても身近でよく知っている人のように錯覚する。その結果、女性の発言を疑う可能性は一気に低くなり、あっという間に騙されてしまうというのである。
筆者も試しに画像加工アプリの女性化フィルターを使用してみた。実によくできたアプリで、自身のエッセンスが少しだけ入ったいかにも実在しそうな「美人女性」が簡単に出来上がった。これはハマりそうだと思う反面、ネット上では嘘の書き込みだけでなく、こうした写真についても疑いの念を持って見なくてはならないのかと思うと、もう何を信じていいものかと頭を抱えるばかりである。