東日本大震災時には最大16.7mの津波が押し寄せた(共同通信社)

東日本大震災時には太平洋岸を広く津波が襲った(共同通信社)

新幹線も高速道路もみんなアウト

 河川にかかっている橋も要注意だ。

「地震で道路と橋の継ぎ目が大きくずれてしまい、数十cmの段差になることもあります。自家用車ではこの段差を乗り越えられないので、橋付近は車で大渋滞になっている可能性が高く、逃げ遅れてしまう」(産業技術総合研究所・研究グループ長の宍倉正展さん)

 沿岸部の埋め立て地では、液状化現象による被害が長く尾を引くという。

「東京湾の周りには火力発電所や製鉄所などの施設が数多く建っているので、液状化によって甚大な人的被害やインフラ面での被害が出るでしょう」(前出・島村さん)

 豊洲や勝どきなど、東京の臨海部では地盤沈下が発生。高層マンションが住めない状態になり、横浜の赤レンガ倉庫付近も液状化する危険性があるという。

 さらに深刻なのは名古屋市で、市内の人口が集中する西半分が埋め立て地。人口密集地の中村区は、区の半分近くが液状化現象の危険指定区域になっているほどだ。

 スーパー南海地震によって、電線や水道管、ガス管などのライフラインは壊滅状態に陥る。被害が大きすぎて復旧作業が進まず、その影響は太平洋岸だけでなく日本全体に波及。国民の約半数が「いつになったら元の生活に戻れるのか」という不安を抱えながら過ごすことになる。

「津波で地下の変電施設などがことごとく水没してしまうため、長期にわたって電気が使えなくなります。タワーマンションの住民は、救援物資や水を受け取るために何十階もの階段を上り下りしなければならない。病気やけがをする人も大勢出るでしょうが、病院施設の発電施設が水没すれば医療もままなりません」(前出・高橋さん)

 復旧をさらに困難にするのが、交通インフラの寸断だ。

「スーパー南海地震が起きたら、新幹線も高速道路もみんなアウトです。例えば静岡県では、浜名湖のなかの弁天島という小さな島の上を新幹線と在来線も走っている。沼津市と富士市にまたがる浮島沼にも新幹線と東名高速が通っている。これらが津波の被害を受ければ、交通インフラは寸断されてしまいます。さらに、津波の水が引いた後もかなりの期間復旧は難しいでしょう」(前出・高橋さん)

 道路が寸断されれば物流が止まり、食糧などの流通が滞る。加工食品の生産もできなくなり、全国で食料不足が深刻化するかもしれない。自動車などの部品の運搬もできず、工業生産もストップ。経済的な損失も甚大なものになる。

 警戒すべきはスーパー南海地震だけではない。

「南海トラフ地震、相模トラフ地震といった海溝型の地震だけでなく、内陸の活断層で起こる首都直下地震に関しても、政府は“30年以内に70%”の確率で発生すると予測しています。そう遠くない時期に必ず起こるということです」(前出・島村さん)

 コロナ対策ばかりが叫ばれる昨今、巨大地震への備えも忘れてはならない。

※女性セブン2021年3月4日号

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