『その女、ジルバ』では勤務するホステスやスタッフなど、主役以外にもフォーカスを当てる人物を毎回設定している。彼女たちは恋をしたり、落ち込む友人のためにケーキを焼いて励ましたり、辛いことがあれば踊ったり。20代の女性とやっていることはさほど変わらない。違いがあるといえば、人生経験の数とシワの本数が多いことだけだろうか。
彼女たちが「誰にでもある」と言うように、それぞれに過去がある。しかし、そうしたわだかまりをかき消すかのように、『OLD JACK & ROSE』のジルババたちは底抜けに明るい。「40なんてまだまだ伸び盛り」「踊って、転んで、笑って……80年!」。こちらがクスッと笑ったり、ドキッと胸を突かれるような名言の数々が毎週の放送で飛び出してくる。
誰もが必ず老いを迎えることになる。そのことを漠然と「楽しみだ」と言える人はごくわずかであって、皆どこかで不安を抱えている。その思いをジルババたちは軽くしてくれているのだと思う。
『その女、ジルバ』はドラマの価値観を少し広くした。「おばさん=楽しそう」という、ポジティブなイメージを構築した。今作を皮切りにして、今後多くの“おばドラ”が制作されることを楽しみに待ちたい。
【プロフィール】こばやし・ひさの/静岡県浜松市出身のエッセイスト、ライター、編集者、クリエイティブディレクター。これまでに企画、編集、執筆を手がけた単行本は100冊以上。女性の意識改革をライトに提案したエッセイ『結婚してもしなくてもうるわしきかな人生』(KKベストセラーズ刊)が好評発売中。