原作者が驚いてしまうほどの脚本のクオリティの高さが、まずは映画の大きな魅力の一つと言えそうだ。さらに劔氏は、今泉力哉監督の手腕にも賛辞を送る。
「描かれている出来事としては2003〜2010年くらいのもので、原作を描いたのが2013年。そこから自分も考え方が変わっていき、今ならあんなことはしないだろうし、描くときも表現を変えていたでしょう。そんな自分にとっては決して美しいだけではない記憶を美化するわけでなく、2021年の映画として今泉力哉さんに成立させてもらったと思います」(劔氏)
「モー娘。」のコンサート会場で役作り
映画の原作者であり、作品内の主人公でもある劔樹人役を演じるのが、今もっとも活躍している俳優の一人・松坂桃李である。
実は松坂桃李と劔氏は一緒にモーニング娘。のコンサートを観に行ったこともあるそうで、劔氏は映画に寄せたコメントの中で「主演の松坂桃李さんには、モーニング娘。のコンサートも一緒に観に来て頂き、その熱心な気持ちに、私のほうが感激して勇気をもらってしまいました」と書き記している。
コンサート会場に今を時めく人気俳優が訪れたら、さぞかし客席が大騒ぎになったのではなかろうか。しかし劔氏によれば、松坂桃李はすっかり“ハロプロオタク”として馴染んでしまっていたようだ。
「松坂さんは、開演前に会場の様子を見たかったのか、一人で会場内をぶらぶら歩きに行ってしまって、『松坂桃李が来てる』と話題になってしまったらどうしようとヒヤヒヤしました。
2019年末なのでマスクをしているわけでもなく、帽子を被っていただけで、さすがに誰かは気付くだろうと。しかし、全く目撃情報は出ませんでした。よっぽど馴染んでいたのだと思います。が、週刊誌が気付いてニュースになっていました。それも結果映画の伏線になってよかったです」(劔氏)