観光列車「志国高知幕末維新号」(時事通信フォト)

観光列車「志国高知幕末維新号」(時事通信フォト)

 地方都市は鉄道の通勤需要が小さく、観光需要に頼らなければ鉄道会社の経営を維持するのは難しい。観光需要で売り上げを拡大させる方針から、JR四国は観光列車を続々と誕生させて利用者の掘り起こしを図った。

 2014年に予讃線で観光列車「伊予灘ものがたり」を、予土線で新幹線0系にそっくりな「鉄道ホビートレイン」の運行を開始。これらが好評を博したことから、JR四国は2017年に土讃線を走る観光列車「四国まんなか千年ものがたり」の運行も開始している。

「鉄道ホビートレイン」はキハ32形という車両を改造したが、JR四国が運行する観光列車の多くはキハ185系という車両を改造して使っている。「藍よしのがわトロッコ」もキハ185系を、徳島にちなんだ阿波藍を想起させるカラーリングへと変身させた。

「冬季は運休になりますが、『藍よしのがわトロッコ』は3月27日から春季の運行を始める予定です。このほどJR西日本からリクエストをいただき、運休期間中の2月20日から3月14日まで京都鉄道博物館で展示することになりました」(同)

 徳島藩最後の藩主・蜂須賀茂韶はスーパーリッチ大名で、明治新政府発足後も政財界で存在感を発揮した。渋沢と蜂須賀茂韶は藍で財を成したという共通点があるだけではなく、明治以降にビジネスパートナーとして強い協力関係となった。そして、日本鉄道(現JR東日本)や喜賓会(現・JTB)といった多くの事業を一緒に取り組んでいる。

「今のところ、JR四国が『青天を衝け』関連の観光列車を運行する予定はありません。しかし、『藍よしのがわトロッコ』には観光・沿線のガイドさんも同乗します。『青天を衝け』関連の説明を付け加えるといった工夫やお土産の販売といった企画は、今後の課題として検討するかもしれません」(同)

 大河ドラマは一年を通じて放送されるため、ゆかりのある地域は大河ドラマをまちおこしの起爆剤として活用する。前作『麒麟がくる』でも、明智光秀とゆかりのある地域は積極的にPRをしていた。そして、大河ドラマをきっかけに新たな観光地が見出されたりもしている。

 新型コロナウイルスの感染拡大により、昨年来から全国的に鉄道需要は減退している。東京圏・大阪圏といった大都市圏は通勤需要があるので、地方都市に比べれば需要は維持できている。

 一方、地方の鉄道は観光需要に頼ってきた。それが、新型コロナウイルスの感染拡大で苦境に追い込まれている。それだけに、好スタートを切った『青天を衝け』と渋沢に期待を寄せる鉄道業界関係者や観光業界関係者は少なくない。

JR四国が運行する観光列車「伊予灘ものがたり」(JR四国提供、時事通信フォト)

JR四国が運行する観光列車「伊予灘ものがたり」(JR四国提供、時事通信フォト)

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