国内

東京五輪ボランティア辞退者からみた「森・二階発言」の問題点

東京五輪組織委員会、森喜朗氏の後任は女性の橋本聖子氏(時事通信フォト)

東京五輪組織委員会、森喜朗氏の後任は女性の橋本聖子氏(時事通信フォト)

 7月23日開幕予定の東京五輪だが、ここにきてボランティア辞退者が続出している。いうまでもなく、2月3日の日本オリンピック委員会(JOC)臨時評議員会での森喜朗五輪組織委員会会長(当時)による、女性蔑視発言がきっかけである。大きな批判を浴びて発言の撤回会見をしたがおさまらず、会長辞任となった。ライターの森鷹久氏が、辞退した元東京五輪ボランティアの人たちに、それぞれの理由を聞いた。

 * * *
 東京五輪の聖火リレーもじきに始まるというタイミングで、組織委員会の森喜朗会長が辞任した。きっかけは、世界中で報じられたとおり「女性理事がいると会議が長くなる」といった内容などの女性蔑視発言だった。地位も権力もある人間が、雑に決めつけた発言をすると社会的な意味を持つので危険だと理解できていないだけでなく、何より、今では多くの国民が変えていかなければならぬと考えている事柄について、いくらなんでも、あまりにふさわしくない発言だったという他ない。

 そしてもう一つ。森元会長の発言を受けて、自由民主党・二階俊博幹事長の無神経な発言があった。

「そんなこと(後に『そのようなこと』と訂正)ですぐ辞めると瞬間には言っても、協力して立派に(大会を)仕上げましょうとなるのではないか」「また落ち着いて静かになったら、その人たちの考えもまた変わる」と、辞退を申し出た人たちの意見表明を取るに足らないと考えていることを隠しもしなかった。

 権力を持つ者は、庶民の意見や気持ちなど無視してよいと考えているかのようなこの発言は、我が国の無神経な現実をそのままズバリ表現するモノだった。大手紙社会部記者の解説。

「二階氏は徹底して森氏擁護の姿勢を崩さず、辞退者が出始めると『新たなボランティアを募集、追加せざるを得ない』と記者に話したのです。真意が別にある、と言い訳をしていますが、庶民を見下しているようにさえ見え、若い記者らは『まさに老害だ』と囁いていました」(大手紙記者)

 騒動を受けて、オリンピックボランティアが実に970人(2月中旬時点)も辞退することになったのだが、コトの重大さを、彼らがわかっているとは到底思えない。「辞退者」に事情を聞いたところ、聞こえてくるのは怒りを通り越した嘆きばかりだ。

「20代で職場関係の悩みから心を病み、クビ同然で会社を追われ、地元に帰ってきたんです。数年間、引きこもりのような生活をしていましたが、5年前にウェブコンサル会社を起業。地元商店街の活性化や商店のネット通販支援などの業務で売り上げは好調、再チャレンジに成功した記念にと、ボランティアに志願したんですね」

 関西地方在住のコンサル会社代表・宮崎和士さん(仮名・40代)は「シティキャスト」として、東京五輪ボランティアに参加する予定だった。五輪を訪れる世界中からの客を、街中や会場近くに立って「アテンド」するという仕事で、勉強中だった英語の学習にも力が入り、コロナ禍でも歯を食いしばりながら間近な「夢」を目標に、自分に喝を入れながら働いた。

関連キーワード

関連記事

トピックス

六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
浅香光代さんと内縁の夫・世志凡太氏
《訃報》コメディアン・世志凡太さん逝去、音楽プロデューサーとして「フィンガー5」を世に送り出し…直近で明かしていた現在の生活「周囲は“浅香光代さんの夫”と認識しています」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
宮城県栗原市でクマと戦い生き残った秋田犬「テツ」(左の写真はサンプルです)
《熊と戦った秋田犬の壮絶な闘い》「愛犬が背中からダラダラと流血…」飼い主が語る緊迫の瞬間「扉を開けるとクマが1秒でこちらに飛びかかってきた」
NEWSポストセブン
高市早苗総理の”台湾有事発言”をめぐり、日中関係が冷え込んでいる(時事通信フォト)
【中国人観光客減少への本音】「高市さんはもう少し言い方を考えて」vs.「正直このまま来なくていい」消えた訪日客に浅草の人々が賛否、着物レンタル業者は“売上2〜3割減”見込みも
NEWSポストセブン
全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン