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2021.02.24 07:00  NEWSポストセブン

東京五輪ボランティア辞退者からみた「森・二階発言」の問題点

記者会見を行う自民党の二階俊博幹事長(左)(時事通信フォト)

記者会見を行う自民党の二階俊博幹事長(左)(時事通信フォト)

 そんな「夢」に、間も無く手が届きそうだった時、テレビから聞こえてきたのは、二階幹事長の先の発言だった。

「コロナでオリンピックが中止になるんじゃないかと気が気でなかったところに、森さんの失言。そして二階さんの発言ですよ。私もかつて、代わりならいくらでもいるからさっさと辞めろ、と上司からパワハラを言われ続けておかしくなったんです。会社のために仕事をしたいという気持ちは強かったんですが。ボランティアが、結果的に二階さんのような人たちの為になってしまうと考えた時、吐き気がしてきたんです」(宮崎さん)

 嫌な記憶がフラッシュバックしていた宮崎さん、二階氏の発言はあくまでも一部の権力者たちの言葉であって、東京五輪の理念は別だと、割り切って考えることができなかった。海外の人の目には、ボランティアをする日本人が「今の日本」を肯定しているかのように映るのではないか、そんな疑いが浮上し始めたタイミングで「辞退者続出」のニュースが流れ始めた。それに触発され、すぐに事務局に連絡を入れたが、担当者からは引き止めの言葉一つなく、あっさり辞退の手続きは処理された。

「全身の力が抜けるような感じ、昔の自分に戻ってしまいそうな……。目標がなくなり、今まで通り仕事をするモチベーションが出ません」(宮崎さん)

 宮崎さんは、五輪に過度な期待を寄せていたようにも見える。しかし、東京五輪は多くの人がぼんやりと抱く理想の実現を引き受けることで盛り上げられてきた側面がある。それを、実態がないのだから期待するなと権力側から切り捨てられてしまったら、五輪への感情もマイナスになりかねない。「五輪のために、世界のために」と抱いてきた夢は、呆気なく裏切られてしまった格好だ。

 また、森氏と二階氏は共に与党・自民党の重鎮であり、保守派閥の最重要人物でもある。今回の騒動を受け、ネット上でも保守派の言論人を中心に、二人を擁護する言説が発信されている。一方、保守派であっても二人の発言は容認できないというのは、千葉県の総合病院に勤務する医療関係者の原明里さん(仮名・30代)。彼女もまた、東京五輪のボランティアに志願していたが、つい先日「辞退」を決めた。

「田舎育ちのためか、昔から保守的な考え方に共感を覚えていました。女性は話が長いという森さんの発言も、なんとなくわかるし、メディアは『切り取り』をしているように思います。それでも、対外的に日本を貶めるような表現を、あの立場で仰るのはどうなのかと違和感しかありません」(原さん)

 そしてトドメを刺したのが、やはり二階氏の発言だったと話す。

「コロナ禍以降、医療従事者を応援しようといいながら、今の政府は長い間、何もやってくれませんでした。私の病院にもコロナ患者がいて、今年の初め頃まで、不眠不休で働いたこともありました。同僚は何人も辞めましたが、院長は『やめるなら辞めろ』『(この病院で)仕事をしたいという人はたくさんいる』と強気で、数万円の手当をくれただけ。会社も政府も一緒なんだ、国全体がそうではないのか、そう考えた時、ボランティアに参加することが情けなくなってきたんです。あの人たちは保守派と言っても、自分と身の回りを守りたいだけ。そのために弱い者から搾取しているだけじゃないかと」(原さん)

 大会組織委員会や東京都によれば、辞退者は森・二階発言以降急増しており、1000人を超えるのも時間の問題だという。そして、森氏の後任に五輪相の橋本聖子氏が着任したが、周囲からの圧力に耐えられず、女性を据えればよいだろうと考えた結論にしか見えないのは、筆者だけではないだろう。辞退したボランティアに「戻ってきて欲しい」という旨の発言もあったが、それは虫が良すぎる、というもの。

 東京五輪ボランティアにはホテルも交通費も用意されず、自分で都合をつけるしかない。決してよいとはいえない条件のもと、かねてより「ブラックボランティア」と指摘されてきたにも関わらず、それでも「五輪を成功させたい」と協力を惜しまなかった人たちでさえ、辞退しているという現実。女性、若者、労働者にとって「生きづらい国だ」と宣伝し続けていることに、彼らはいつ気がつくのだろうか。

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