冒頭のゼウスバローズのように、引退馬のセカンドキャリア支援については、多くの組織や人々の尽力があり、だいぶ軌道に乗ってきました。いまや200頭近くの引退馬が「サンクスホース」として名を連ねています。エアソミュールやフルーキーといった重賞勝ち馬もいれば、未勝利戦を勝ち切れなかった馬もいます。みな同じスタートラインに立ち、リトレーニングを経て、全国の乗馬クラブや学校の馬術部といったところで働くようになりました。機会があったら、「サンクスホースプラットホーム」のサイトをのぞいてみてください。他にも独自の方法で競走馬の”第2の馬生”を支援する組織や牧場ができており、JRAのバックアップもさらに充実してきそうです。
一方、ホースセラピーの普及はまだまだこれからです。そのためにはオンラインの課金制の馬サロンのようなものをつくり、さまざまな人と交流しながら馬づくりの疑問や問題点について話し合ったりできればと思っています。
天理教の仕事をしながら、能登半島の珠洲市につくった牧場を地元の人の力をお借りしながら運営していきます。こちらはセカンドキャリア支援ではなく、乗馬としての役目も終えた馬たちの「終の棲家」です。遠いところですが、来ていただければお会いできるかもしれません。
ところで、先週ようやく「今年の初勝利」をあげることができました。次の先生にひきついでいただくためには2着がいいなとなんとなく思っていましたが、やはり勝ってうれしかった。
今週の競馬が最後になりますが、無観客競馬ということで、調教師の引退式はありません。少し寂しい気もしますが、静かに消えたいと思っていたので、かえってよかったのかもしれません。
競馬界を去るにあたって、思い残すことはまったくありません。これから新しい人生に踏み出します。