価格を表示しない「予告広告」の闇
新築マンションの商品情報の中で、場所の次に重要なのは価格である。しかし、現行のルールでは価格を表示しないで、実質的な募集広告を行うことが認められている。それは「予告広告」というやり方だ。
建前上「今は物件の内容をお知らせしていますが、販売は行っていません。価格も決まっていませんので表示できません」というのが予告広告である。しかし、予告広告を見てモデルルームを見に行くと「予定価格表」なるものを示されて、購入の意思を示す「要望書」を提出するように迫られる。実質的な販売活動である。
売り主側は、その要望書の集まり具合が悪かったり良すぎたりすると、価格を上げたり下げたりする調整を行う。予告広告とは、実際の消費者動向を見極めるマーケティングであったりもするのだ。しかし、何も知らない消費者は要望書を販売申込書だと勘違いしているケースもある。
ポストに大量に投函されるマンション広告
新築マンション市場というのは、このように売り主側と消費者側での情報の非対称性が激しい。多くの情報を有する売り主側が圧倒的に有利な構造なのだ。
ネット社会になって、その非対称性が少しは解消されたかというと、かえってひどくなっている気がする。なぜなら、ネット上にはどういうわけか売り主側に阿るブログや書き込みが溢れているからだ。
今のネット空間では、新築マンションについての客観的な商品評価を行う仕組みやジャーナリズム活動が少なすぎる。これでは当面、マンション情報の非対称性は解消されないだろう。