「理想を実現するのが人の務め」
現代では、保険の重要性を説くまでもなく誰もが理解しているし、紙は当たり前のようにスピーディに大量生産されている。だが、そんな常識が作られるまでには、渋沢の相当な努力があった。
新事業がなかなか理解されなかったり、アイデアに技術が追い付かなかったりするのは、何も明治時代に限らないだろう。今、未曾有のコロナ禍のなか、現状を打破すべく多くの起業家たちが奮闘しているに違いない。そのなかには、何年か先には大事業に成長するものもあるはずだ。
壁にぶちあたっても、仲間と知恵を絞りながら、乗り越えていってほしい。大切なのは理想を持ち、それを実現させることである。渋沢の名言で本稿を締めたい。
「およそ目的には、理想が伴わねばならない。その理想を実現するのが、人の務めである」
旧渋沢邸 渋沢栄一の生家「中の家(なかんち)」(埼玉県・深谷市/時事通信フォト)
【参考文献】
(1)渋沢栄一、守屋淳『現代語訳 論語と算盤』(ちくま新書)
(2)渋沢栄一『青淵論叢 道徳経済合一説』(講談社学術文庫)
(3)幸田露伴『渋沢栄一伝』(岩波文庫)
(4)木村昌人『渋沢栄一 日本のインフラを創った民間経済の巨人』(ちくま新書)
(5)橘木俊詔『渋沢栄一』(平凡社新書)
(6)鹿島茂『渋沢栄一(上・下)』(文春文庫)
(7)渋澤健『渋沢栄一 100の訓言』(日経ビジネス人文庫)
(8)岩井善弘、齊藤聡『先人たちに学ぶマネジメント』(ミネルヴァ書房)
【プロフィール】
真山知幸(まやま・ともゆき)/著述家、偉人研究家。1979年兵庫県生まれ。業界誌出版社の編集長を経て、2020年に独立。偉人や歴史、名言などをテーマに執筆活動を行う。『ざんねんな偉人伝』『君の歳にあの偉人は何を語ったか』『企業として見た戦国大名』『ざんねんな三国志』ほか著書多数。