「おせんが胸をはだけていても、全然いやらしさを感じさせません」(壇蜜)

「おせんが胸をはだけていても、全然いやらしさを感じさせません」(壇蜜)

山下:留守模様という手法で、道具などを通じて人の気配を感じさせるのです。

壇蜜:留守模様……(うっとりと)。繊細な日本らしい美意識ですね。「写生 ヤマユリ」は鋏で摘んだ山百合をここで雪岱が写生しました、という演出でしょうか。

山下:雪岱の作品に着想を得た現代作家とのコラボレーションです。『枯山百合』は超絶技巧の一木造り、見立漆器『鋏』も檜から作られ、漆が塗られています。

壇蜜:使い込まれたような花鋏の艶、花びらや葉が朽ちた穴など、見れば見るほどリアルで細微な表現は神業ですね。雪岱にインスパイアされた後世の作品はどれも雪岱のスタイルを見事に体現しながら、隅々まで趣向が凝らされています。

山下:僕は約30年前に『おせん 雨』と出会い、なんてセンスのあるグラフィックデザインかと一瞬で虜になりました。

 雪岱と日本画の大家・鏑木清方は共に鏡花の装幀本を手がけるなど尊敬し合う、よきライバルだったんです。戦後まで生きて歴史に名を刻んだ清方とは違い、雪岱は生前に高く評価されつつ戦時下に亡くなり歴史に埋もれてしまいましたが、この展覧会で再評価の機運が高まることを切に祈っています。

【プロフィール】
山下裕二(やました・ゆうじ)/1958年生まれ。明治学院大学教授。美術史家。『日本美術全集』(全20巻、小学館刊)監修を務める、日本美術応援団団長。

壇蜜(だん・みつ)/1980年生まれ。タレント。執筆、芝居、バラエティほか幅広く活躍。近著に『三十路女は分が悪い』(中央公論新社刊)。

●特別展『小村雪岱スタイル──江戸の粋から東京モダンへ』

【会場】三井記念美術館
【住所】東京都中央区日本橋室町2-1-1三井本館7階
【会期】4月18日まで
【開館時間】11時~16時(入館は15時30分まで)※日時指定予約制
【休館日】月曜、2月28日
【入館料】一般1300円※70歳以上は1000円(要証明)
【今後の予定】富山展:4月27日~6月13日、富山県水墨美術館/山口展:7月8日~8月29日、山口県立美術館

撮影/太田真三 取材・文/渡部美也

※週刊ポスト2021年3月12日号

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