判決を受け、政子被告は控訴。被告の弁護を担当するよつば法律事務所の弁護士・端将一郎さんは、「政子被告自身も控訴すべきかどうか決め切れていない状況だったが、2週間の期限内に控訴しておかないと二度とできなくなるため踏み切った。今後、控訴を取り下げる可能性もある」として、こう続けた。
「今回の裁判では、被告は犯行当時責任を問える精神状態だったと判断されました。一方で、介護殺人において1人が亡くなった事案であれば、加害者が心神耗弱であれば9割に執行猶予がついており、全体で見ても半分ほどには執行猶予がついています。刑罰では、どうしても亡くなった人数に焦点が当たりますが、本件は介護対象者が3人なので、1人の介護より何倍も大変です。多大な負担を背負った人がより処罰が重くなるのは、やるせない」
介護殺人で3人が亡くなるケースは、過去に例がない。しかし、これは政子被告に限ったことではなく、今後同様のケースが発生する可能性があると端さんは指摘する。
「高齢化が進み、老老介護が増える中で、ひとりで一手に介護を背負い、追い込まれる人が増える可能性は大いにあります。誰にとっても他人事ではないのです」
また、日本各地に根付く古くからの風習も、介護する人を追い込む一因になっているのかもしれない。政子被告は、長男の嫁。日本の家父長制においては、長男が財産などの相続で優遇される分、親の介護も長男夫婦が担うという風潮が強い。長男の嫁が面倒を見るのが当たり前。そんな意識が、きっと政子被告自身にもあったのだろう。だからこそ、誰かに頼ることに罪悪感を覚えたのかもしれない。
「介護はプロに頼ることも大切」そう叫ばれて久しいが、実践するのはなかなか難しいのかもしれない──。
※女性セブン2021年3月18日号