国内

遺族も「処罰は望みません」 介護疲れ3人殺人、懲役18年判決の是非

現場となった福井県敦賀市の民家

現場となった福井県敦賀市の民家

 2019年11月、福井県敦賀市の民家で殺人事件が発生した。介護をしている義父母(当時93才と95才)と夫の太喜雄さん(同70才)を殺害したとして、妻である岸本政子被告(72才)が逮捕された。

 静かな村で起こった殺人事件に、当時、地元では悲しみと同じくらい驚きの声も上がった。というのも、政子被告は「家族思いで本当にええ人」と村人の誰もが口をそろえるほど、評判の妻だったからだ。嫁姑関係も良好で、殺害された義母の志のぶさんも、日頃から周囲に「ええ嫁さんに来てもろて感謝しとる。村一番の嫁や」と、話していたという。しかし政子被告には懲役18年の判決が言い渡された。

 福井地裁で行われた裁判員裁判では、政子被告の口から事件の全貌が語られた。

「事件の直前に目が覚めた政子被告は、『こんなに苦しいなら楽になりたい』と志のぶさんが話していたのが頭に浮かんで、志のぶさんの首をタオルで絞めた。その後、『義父をひとりにするのはかわいそう』『体調の悪い夫を残していくと、娘たちに迷惑がかかると思った』と、次々と手をかけていった当時の心境を語っていました。

 また、検察側から『周囲に助けを求められなかったのか』と尋ねられると『私の性格上、できませんでした。娘に介護を任せて迷惑をかけるのは心苦しかった』と答えて、亡くなった3人に対しては、『3人は最後まで生きたかったと思う。やってはいけないことをした』と後悔をにじませました」(全国紙記者)

 公判では、義弟(太喜雄さんの弟)や、義妹(太喜雄さんの弟の妻)も証言台に立っている。

「義弟は被告について『岸本家にとって大事なかた。処罰してもらいたくない。早く帰って来てほしい』と声を震わせました。義妹も『私たちが早く気づいていたら……処罰は望みません』と語っています」(前出・全国紙記者)

 弁護側は、事件当時、被告は心神耗弱状態だったとして、執行猶予付き判決を求めた。しかし、今年1月5日、裁判所が言い渡したのは懲役18年の実刑判決だった。

「一般的に3人を殺害した事件では、無期懲役や死刑判決を言い渡されることが少なくありません。懲役18年というのは、これまでの被害者が3人の殺人事件と比較して明らかに軽い量刑です。

 河村宜信裁判長は、判決文で『献身的な介護を続け、夫の介助も果たしながら生活した被告人が対処能力を超えて負担を抱え、追い込まれた』として、被告が置かれた状況に理解を示しました。一方で、『被告は善悪の判断が非常に難しい心神耗弱だった』という弁護側の主張は受け入れられませんでした」(前出・全国紙記者)

関連記事

トピックス

”ネグレクト疑い”で逮捕された若い夫婦の裏になにが──
《2児ママと“首タトゥーの男”が育児放棄疑い》「こんなにタトゥーなんてなかった」キャバ嬢時代の元同僚が明かす北島エリカ容疑者の“意外な人物像”「男の影響なのかな…」
NEWSポストセブン
クマ対策には様々な制約も(時事通信フォト)
《クマ対策に出動しても「撃てない」自衛隊》唯一の可能性は凶暴化&大量出没した際の“超法規的措置”としての防御出動 「警察官がライフルで駆除」も始動へ
週刊ポスト
滋賀県草津市で開催された全国障害者スポーツ大会を訪れた秋篠宮家の次女・佳子さま(共同通信社)
《“透け感ワンピース”は6万9300円》佳子さま着用のミントグリーンの1着に注目集まる 識者は「皇室にコーディネーターのような存在がいるかどうかは分かりません」と解説
NEWSポストセブン
天皇皇后両陛下主催の「茶会」に愛子さまと佳子さまも出席された(2025年11月4日、時事通信フォト)
《同系色で再び“仲良し”コーデ》愛子さまはピンクで優しい印象に 佳子さまはコーラルオレンジで華やかさを演出 
NEWSポストセブン
「高市外交」の舞台裏での仕掛けを紐解く(時事通信フォト)
《台湾代表との会談写真をSNSにアップ》高市早苗首相が仕掛けた中国・習近平主席のメンツを潰す“奇襲攻撃”の裏側 「台湾有事を看過するつもりはない」の姿勢を示す
週刊ポスト
クマ捕獲用の箱わなを扱う自衛隊員の様子(陸上自衛隊秋田駐屯地提供)
クマ対策で出動も「発砲できない」自衛隊 法的制約のほか「訓練していない」「装備がない」という実情 遭遇したら「クマ撃退スプレーか伏せてかわすくらい」
週刊ポスト
真美子さんのバッグに付けられていたマスコットが話題に(左・中央/時事通信フォト、右・Instagramより)
《大谷翔平の隣で真美子さんが“推し活”か》バッグにぶら下がっていたのは「BTS・Vの大きなぬいぐるみ」か…夫は「3か月前にツーショット」
NEWSポストセブン
文京区湯島のマッサージ店で12歳タイ少女を働かせた疑いで経営者が逮捕された(左・HPより)
《本物の“カサイ”学ばせます》12歳タイ少女を働かせた疑いで経営者が逮捕、湯島・違法マッサージ店の“実態”「(客は)40、50代くらいが多かった」「床にマットレス直置き」
NEWSポストセブン
山本由伸選手とモデルのNiki(共同通信/Instagramより)
《いきなりテキーラ》サンタコスにバニーガール…イケイケ“港区女子”Nikiが直近で明かしていた恋愛観「成果が伴っている人がいい」【ドジャース・山本由伸と交際継続か】
NEWSポストセブン
Mrs. GREEN APPLEのギター・若井滉斗とNiziUのNINAが熱愛関係であることが報じられた(Xより/時事通信フォト)
《ミセス事務所がグラドルとの二股を否定》NiziU・NINAがミセス・若井の高級マンションへ“足取り軽く”消えた夜の一部始終、各社取材班が集結した裏に「関係者らのNINAへの心配」
NEWSポストセブン
山本由伸(右)の隣を歩く"新恋人”のNiki(TikTokより)
《チラ映り》ドジャース・山本由伸は“大親友”の元カレ…Niki「実直な男性に惹かれるように」直近で起きていた恋愛観の変化【交際継続か】
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 内部証言で判明した高市vs習近平「台湾有事」攻防ほか
「週刊ポスト」本日発売! 内部証言で判明した高市vs習近平「台湾有事」攻防ほか
NEWSポストセブン