母みどりさんが描いたアンスリウム。そこにはたしかに”明るい母”の姿があった

母みどりさんが描いたアンスリウム。そこにはたしかに”明るい母”の姿があった

 その後も介護保険の力を借りて在宅介護を続けましたが、母は気に入らないヘルパーを勝手にクビにしてしまい、荒れ放題になった家にはペットの犬の排泄物が転がっていました。その光景を見た時に「ひとりで暮らすのはもう無理だ」と諦めて、姉や兄と相談し、母を施設に入れることを決断しました。

 10か所以上の施設を見て回って、衛生環境からヘルパーひとりあたり何人の入所者をケアしているかまで細かくチェックしました。最終的には兄妹3人の家からなるべく近く、看護師が24時間常駐し、クリニックを併設する介護付き有料老人ホームに決めました。

 本当に大変だったのはそれからです。自宅から梃子でも動かない母を、「水道工事をするから、1週間だけ」と連れ出したものの、頭が良い母にはウソはお見通し。施設に着いた途端に帰ろうとする母を何とか押しとどめ、その場を去りました。

 すると翌朝一番に施設から呼び出されました。慌てて駆けつけると、「苦労して育てた親に何てことをするんだ!」「自分の家があるのに、なぜこんな所に入れるのか!」と泣き叫ぶ母に延々と罵倒されました。

 途方に暮れた私と姉は、それから2週間、シフトを組んで毎日母に会いに行きました。ところがホーム長から「子供が来るとお母さんは甘えとワガママで環境に馴染もうとしない。これから1か月は来ないでください」と叱られました。

 その時は親を見捨てるようで本当につらく、姉とともに散々泣きました。一生懸命育ててもらったのに……と悩んだ末に、とうとう「母を引き取る」と姉に告げました。

 でもその時、ウチのお手伝いさんから、「24時間、誰が世話をするんですか。一時的な感情で引き取ってはダメです」と叱られ、母に施設での生活を続けてもらうことにしました。

 その後も母は介護職員に暴言を吐き、二度にわたって「脱走」するなど、施設になかなかなじめませんでしたが、入所からおよそ1年後に大きな転機が訪れました。

 私の知人が、施設内で母に「臨床美術」のセラピーを施すことになったんです。臨床美術は日本発祥のメソッドで、独自のプログラムに沿って創作活動をし、認知症や自閉症の症状を改善させる試みです。

 母はハワイが大好きで、何度も旅行を楽しんでいました。そんな母に臨床美術士の知人はハワイの写真やグッズを見せ、音楽を流し、現地での思い出を尋ね、絵を描くよう促しました。母は昔の楽しかったことを思い出しながら絵を描きました。

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