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歌舞伎界一のイケボ・坂東彦三郎、コロナ禍で感じた「読み聞かせ」の力

坂東彦三郎

坂東彦三郎はコロナ禍で読み聞かせを始めたという

“変種株”も広がりを見せ、依然として世界中が警戒する新型コロナウイルス。日本では感染拡大防止のために、2度に渡る緊急事態宣言が発令。外出自粛が要請され、仕事もリモートが主になるなど、日常における生活様式は大きく変化した。

 コロナによって激変したのは歌舞伎の世界も同じだ。2020年3月以降、公演は軒並み中止や延期が余儀なくされ、5月には、東京オリンピックの開催にあわせ、大々的に行われる予定だった市川海老蔵(43才)の「13代市川團十郎白猿」襲名も延期。興行が打てないことにより、松竹は売り上げが50%減、175億円の赤字を計上するなど、歌舞伎界全体が大きな打撃を受けたのだ。

 歌舞伎俳優・9代目坂東彦三郎(44才)も大きな影響を受けた一人だ。彦三郎は祖父に人間国宝・17世目市村羽左衛門(享年84)を持つ名門の家柄。そのスッキリとした立ち姿と「歌舞伎界隋一のイケボ」と称される口跡の良さで多くのファンを持ち、2019年には『刑事7人』などドラマへの進出も果たすなど多方面で活躍している。

 しかし「公演がない」ということは、歌舞伎俳優にとっては「立つ舞台がない」ということ。御曹司である彦三郎にとってもそれは例外ではなく、44年の人生で初めて「立ち止まって考えざるをえない」日々だった。

「幼い頃から、祖父や父の元で歌舞伎を学んできましたが、高校生の時に一念発起してイギリスに留学。海外に出たことにより、『国際的な視点をもって古典を演じる』という意識とこの世界で生きてゆく覚悟が生まれ、1994年、18才の時に学生を辞め、歌舞伎俳優一筋となりました」(彦三郎・以下同)

 2017年には、父・坂東楽善(77才)、弟・坂東亀蔵(42才)、息子・坂東亀三郎(8才)と共に、坂東彦三郎として親子三代で4人同時襲名をする。以降、とどまることなく舞台に立ち続けてきた彦三郎だが、「コロナ禍」で状況は一転する。

「2020年の3月、最初の自粛要請が出た際に出演予定だった芝居が全部中止になってしまい、スケジュールが真っ白になりました。やることも特にないからまず、台本から資料から、身の回りの整理をしました。その後、秋口に自宅の引っ越しという機会があったので、妻と、倅の亀三郎と共に、『これからは未来の思い出を増やしていこう』と家族3人で断捨離をしました。

 いるものといらないものを分ける作業を進める中で浮かんできたのは過去に立った舞台のことや今の状況、そして将来自分がどうなりたいか、ということだった。そんな自問自答の末、『自分らしさを大切に生きていこう』と考えるようになりました。気がついたら精神的にも“断捨離”していたといわけです」

 歌舞伎役者としての見通しが立たない中、彦三郎が断捨離とともに新たに取り組んだのがその美声を生かした「読み聞かせ」の配信だ。2020年5月から配信を始めたYouTube『坂東彦三郎ch』で、絵本や島崎藤村らの短編古典作品の音読を配信している。

「始めたきっかけは、倅の寝かしつけのためでした。緊急事態宣言に伴って休業する書店が多かったため、区立図書館に出掛けて倅のための本を借り、寝る前に音読する。倅も楽しみにしていてくれているようで、どうしても出来ない時にはスマホに録音したものを聞かせています。女房曰く、倅はスマホを枕元に置いて、嬉しそうに聞いているようです。“声を出して読み、相手に聞かせる”と言うことはぼくの中で、人として、親として、役者としても多くの発見があり、ほぼ毎日休みなく続けています」

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