『あのこは貴族』(全国公開中) (c)山内マリコ/集英社・『あのこは貴族』製作委員会、配給:東京テアトル/バンダイナムコアーツ

『あのこは貴族』(全国公開中)より (c)山内マリコ/集英社・『あのこは貴族』製作委員会、配給:東京テアトル/バンダイナムコアーツ

「そして、さらに状況が変わってきたのは、2017年頃からの大きな役どころの仕事と、2018年からの怒涛の主演作ラッシュです。『止められるか、俺たちを』、『チワワちゃん』、『さよならくちびる』、『あのこは貴族』での主演に加え、『花筐/HANAGATAMI』や『ここは退屈迎えに来て』でも重要な役を演じています。

 現在、年単位のキャリアでいうと、宮崎あおい、蒼井優と並ぶ仕事をしているといえます。二人とは違う状況と出発点からのルートではありますが、個性や状況が違うからこそ、むしろ近いステージに辿り着いたのかもしれません」(小野寺氏)

 門脇の活躍ぶりは、NHK大河ドラマ『麒麟がくる』で演じたヒロイン・駒役からもうかがえるだろう。そんな彼女が主演を務める最新の映画が『あのこは貴族』(2月26日公開)だ。小野寺氏は同作における彼女の姿を「いまの時代が求める俳優」と評価する。

「『さよならくちびる』、『花筐/HANAGATAMI』でも門脇麦はやはり陰にまわる側の役でしたし、今回の『あのこは貴族』では、上流階級の女性を演じながらも、能動的に生きる水原希子の役に対し、なかなか前に出ることができない役を演じています。そうした、ある意味鬱屈した役柄というのは、俳優として、われわれ観客に共感を抱かせるイメージがあるといえます。

 そういう意味では、いまの映画には、主役に観客とつながる部分が必要とされるケースが増えているのではないかと感じます。そういった見方では、門脇はいまの時代が求める俳優だといえると思います」(小野寺氏)

 10代の頃の宮崎あおいと蒼井優も、当時の時代に求められていた側面があったのではないだろうか。そんな二人の女優に憧れて一人の高校生が稀有な役者へと変貌を遂げたように、銀幕に映る門脇麦の姿に魅せられた少年少女の中から、今後役者の道へと進んでいく人物も現れるのかもしれない。

◆取材・文/細田成嗣(HEW)

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