中国と北朝鮮による国内揺さぶりの動きがある(EPA=時事)
二階氏は親中派として知られる。だからこそ中国は、二階氏を通じて日本の外交を揺さぶろうとしているのだろう。対中強硬姿勢を崩さないアメリカに日本が尻尾を振るのをやめさせたい中国は、二階氏に北朝鮮問題で手柄を立てさせ、菅首相の訪米が空振りだったと印象づける戦略かもしれない。少なくとも日本の政府と与党にすきま風を吹かせる効果はあるだろう。前出の外交部会幹部は警戒する。
「バイデン政権が中国とコトを構えようとしているときに、菅首相が中国の思惑に乗った二階氏の訪朝計画を止められなければ、アメリカの虎の尾を踏むことになりかねない」
菅首相には外交経験はほとんどなく、大国と駆け引きする手腕もない。二階氏が中国の誘いに乗って日本が二元外交に踏み出せば、政府と与党はバラバラになり、日米同盟もクアッド(日本、アメリカ、オーストラリア、インドの首脳や外相による安全保障や経済を協議する枠組み)も危うくなる。笑うは中国ばかりである。
■武冨薫(ジャーナリスト)